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腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症の病態と治療について

2019年11月29日

 腰痛は、現代の産業社会において、上気道疾患(鼻から喉頭にかけての病気)に次いで2番目に多い疾患です。疫学的調査を垣間見ますと、50~80%は腰痛経験者で、年間10~15%の方が、その痛みに悩んでおられます。
 整形外科変性疾患である「腰椎椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」は、腰痛をもたらす代表です。椎間板ヘルニアは、腰痛に加え、耐えがたい下肢痛やしびれが起こります。また重篤な症状として、下肢運動神経麻痺や膀胱直腸障害を来たすこともあります。一方、脊柱管狭窄症は症状が進行すると、100mの歩行も困難となり、やむなく休息を取りつつ歩くようになります(間欠性跛行)。また、立った姿勢から前下方へとかがみ込み姿勢が強いられます。さらに両足でバランスを保つために、前かがみの姿勢を取るようになります。

 椎間板腔は、水分を多くふくみ中央に位置する髄核と、それを取り囲み弾性に富む線維輪から成ります。これら椎間板組織はクッションの役割をしています。椎間腔の両・後側方には1対の椎間関節が、靭帯とともに脊柱の動きを支えています。重い荷物を持ったり、ひねりすぎると、椎間板に亀裂を生じ、髄核が神経管内へと突出・脱出します。その結果で神経根や馬尾神経が圧迫され、下肢痛や神経根・馬尾神経麻痺などを生じます。
 問診を経て、身体学的な診察を終えた後にX線画像、CT画像、MRI画像などの形態上の診断を行います。MRI画像は脊椎・脊髄の診断には特に有用です。画像から神経根型(片側下肢痛など)と馬尾型(両下肢しびれと痛み、残尿感、会陰部のしびれなど)に分類できます。
 重症の腰部脊柱管狭窄症では、歩行で下肢症状がさらに悪化することもあります。なお、高齢の方では下肢が冷えると、痛みが増強する、との訴えがあります。この動脈硬化症性疾患による重症虚血肢進展も考えられ、ABI検査での確認が必要です。
 治療となると、まず保存的治療が勧められます。両疾患とも、安静、コルセット、物理療法(温熱療法、腰椎牽引)、薬物療法などが基本です。最近、私自身が久しぶりに急性腰痛を経験しました。下肢症状とまではありませんが、予防的に、敷き布団は薄く、硬い椅子に座り、重量物を持つ際は脇を締めて後方に体を反らさない、などを心掛けておりましたが、痛みはシップと適切な鎮痛剤、上下幅の狭い仙腸関節を横止めのベルトで、対処をしています。
 さらに治療には手術をふくめ、早急な対処が必要な場合もあります。例えば、尿の出が悪く残尿もある排尿障害、下肢に力が入らないといった運動麻痺などです。
 腰椎椎間板ヘルニアの手術は随分進歩しています。従来の髄核摘出術(LOVE法)から、内視鏡や顕微鏡を用いた非侵襲的ヘルニア摘出術へと、移行しています。
 腰部脊柱管狭窄症では、神経圧迫をでき得る限り除去する、従来の椎弓切除術が行われています。脊柱不安定性の高度例には、除圧と椎体間固定に加え、脊柱固定用の金属ロッドとスクリューも用いられます。前述の100m以下での間欠性跛行は、確実に改善可能といえます。
 しかしながら手術が複雑で、年齢が上がるほど、重篤な例が多く、慎重を要します。術前に、どういう内容の手術であるか、選択できるのか、術者の実施件数など、さらに術後に予想される結果や予期しがたい合併症などについて、担当医師とよく話をされることをお勧めします。