病気について知る病気の解説

増え続ける大腸がん

2021年10月22日

 大腸の病気は近年急速に増加し、なかでも大腸がんの増加が注目されています。過去50年間で死亡数は男女とも約10倍に増加し、平成26年度以降、罹患率は男女合計で1位となっています。
 大腸がんの増加は生活環境の欧米化が原因と考えられています。すなわち、環境を変えることで罹患する可能性も変えることができる病気の1つであり、生活習慣病の側面も持つことが分かってきています。例えば、赤身肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、過度の飲酒、喫煙、肥満などはリスクになり、野菜の摂取、定期的な運動などはリスクを低下させます。これらは自らで変えることが可能なリスクです。一方、年齢、家族歴、がんの既往、人種はリスクになりますが、これらは自分自身では変えようがありません。
 大腸がんは、病状がかなり進行しないと自覚症状が出ないため、血便や腹痛などの自覚症状が出てしまってから検査したときには、病状がかなり進行している患者さんが多くみられます。そこで、症状が出ないうちから健診などでがんの早期発見を目指すことが重要となります。
 特に内視鏡検査が最も有効なのですが、ちゅうちょされる場合は安価で簡便な便潜血検査を受けることをお勧めします。便潜血検査は簡便であるにもかかわらず、大腸がんを比較的早い段階で発見できることが証明されています。ただし、陽性率は70%程度ですので、毎年受けることが大事です。また、陽性の場合は必ず精密検査を受けることも重要です。
 ところが、日本消化器がん検診学会の全国集計によると、便潜血検査陽性者のうち内視鏡検査を受ける人は約半数しかいません。「検査前の処置が大変」「時間がかかる」「痛い」などのイメージを持っている方も多いようです。しかし内視鏡検査は、以前に比べると格段に検査機器や検査技術が進歩しており、痛みが出にくく、鎮静剤を使えば、さらに楽に検査が受けられるようになってきています。そして内視鏡は診断能においても非常に進歩しており、顕微鏡に近いくらい拡大して観察ができるため、がんの正確な診断が可能となってきています。
 近年、大腸の検査はCTを用いたものやカプセル型内視鏡などが開発され、すでに検査可能となっていますが、通常の内視鏡に比べて診断能がある程度落ちることと、腸の中をきれいにする下剤の量は変わらないか、むしろ多くなることがあること、さらに、検査で異常があれば最終的には通常の大腸内視鏡をしなければならないことに注意する必要があります。
 幸い、大腸は内視鏡で直接見ることができる臓器であり、大腸がんは早期に見つければ治る病気です。また早い段階であれば体に負担の少ない内視鏡治療も可能となります。生活習慣の見直しに加え、40歳以降(家族歴がある場合は、より若い年齢)には、定期的な検診を受けることを心がけましょう。