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PET-CTについて

2021年10月29日

 PET-CTという検査は、今では皆さんが一度は聞いたことがあるものとなりました。しかし多くの方は、「検診でがんを早期発見する機械だよね」という認識ではないでしょうか。現在は、PET-CT検査の8割が検診ではなく、がんと診断された方の最適な治療や、再発を早く見つけるために利用されています。今回はこのPET-CTについてお話しします。
 PETとはPositron Emission Tomographyの略で、日本語では陽電子放射断層撮影となります。放射線を出す特殊な薬を体内に投与し、専用のカメラで撮影するという検査です。似た検査にSPECT(※)というものがありますが、PETで使う薬の方が細かく体内の分布がわかる一方、薬の効き目は作成から半日で無くなります。保存ができないので色々と工夫しています。
 PETで最も使われる薬はブドウ糖に似せたFDG(※)です。がんや炎症は健康な組織よりブドウ糖を多く消費するという性質を利用しています。このことからがんだけでなく、大きな血管や心臓の炎症を調べるのにも使います。よく使うので、以下はFDGに限ってお話しします。
 ここまでアルファベットが並んで難しそうに聞こえますね。でもPETの写真は、全身のわるい所(がんや炎症)にFDGが集まり光って見え、とても分かりやすいものです。この分かりやすさは大きな特長です。がんが1cmほどになればPET-CTで発見できるといわれています。
 臓器の形はCTの方が細かく写るのですが、正常と病気との境は馴れていないとよく見えません。そこでPETとCTを合成すると病気の場所や大きさも細かく分かり、治療の方針を立てやすくなります。これでPET-CTとかFDG-PET/CTなどという名称になります。
 検査の流れは、検査前の5~6時間の絶食、FDG注射のあと1〜2時間のベッドでの安静、30分程度のPETとCTの同時撮影となります。この絶食や安静が大事で、病気の場所にFDGがより集まり、写真もきれいで分かりやすくなります。検査費用は検診目的だと7~10万円ぐらいが多いようです。
 PET-CTでは発見しづらいがんとして、肝臓や腎臓のがんがあります。それを補うために超音波検査やMRIを組み合わせることもあります。薄い形の多い胃がんも内視鏡の方が早期に見つけやすいので、追加することもあります。
 PET-CTを実際に受けてみると、数ccのFDG注射以外は寝ているだけなので、とても楽な検査です。ほぼブドウ糖であるFDGも副作用はまずありません。糖尿病の方や普段使っている薬によっては、FDGと干渉して病気が分かりにくくなることはあります。
 また被ばくすることも欠点です。技術進歩によりPETやCTの被ばく量は少なくなり、人体への影響が確認されている量よりはるかに小さいものにはなっています。年に数回程度の検査では、まず問題はないとはいえます。

SPECT…single photon emission CT
FDG…fluorodeoxyglucose