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「物忘れだけでない」認知症の多様な症状~BPSDについて~

2021年11月19日

 認知症にはアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型などいくつかの種類がありますが、いずれも「物忘れ」「理解・判断力の低下」「日常動作がうまくできない」などの認知機能の低下が主症状です(認知症の中核症状といいます)。それ以外にも「徘徊」「昼夜リズムが逆転する」「イライラ怒りっぽくなった」「気力が乏しくゆううつ」「被害妄想」なども認知症によく見られます。このような物忘れ以外の症状は、認知症の行動・心理症状(英略称:BPSD)といいます。例えば「落ち着きのなさ」「徘徊」「暴言・暴力」「付きまとい」などの行動の症状、「幻覚・妄想」「不安」「うつ」「無気力」などの心理症状などです。これらの症状が物忘れ以上にご本人のつらさやご家族の負担となることも珍しくありません。またBPSDは、認知症自体の重症度とは関係なく出現するため、物忘れの軽症な方に活発なBPSDを認めることもあります。
 BPSDは環境や生活リズムの影響を受けて出現することが多いため、環境を整えることでも改善が期待できます。さらに近年、厚生労働省の調査研究班から「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(現在第2版)」が作成されるなど、お薬の治療も進んでいます。症状が強くて自宅での対応が難しい場合は、入院で安全に治療を受けることもできます。BPSDは中核症状に比べて、むしろ治療の選択肢が多いといえるかもしれません。
 物忘れ外来、精神科、心療内科などでアドバイスや治療を受けられます。ぜひご相談ください。