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大腿骨骨折 冬の転倒に注意

2021年12月29日

 日夜寒さが身にこたえる時期になってきました。冬に気をつけたいケガとして転倒による骨折が挙げられます。今回は寝たきりの原因になりやすい「大腿骨近位部骨折」について説明します。
 大腿骨近位部骨折は脚の付け根(股関節部)に起こる骨折で、骨粗しょう症などで骨がもろくなった高齢の方に多い骨折です。冬になると厚着になるため体を動かしにくかったり、寒さで筋肉がこわ張ったりすることで転倒しやすくなります。また、新型コロナウイルス感染症の流行により運動不足が原因で転倒しやすくなっている方が増加しています。
 転倒後に股関節部に痛みが出現した場合は大腿骨近位部骨折が疑われます。多くはレントゲン検査で診断が可能ですが、CTやMRIなどの追加検査が必要になることもあります。
 治療ですが、この骨折の特徴としてギプス固定などの保存療法が困難であることが挙げられます。保存療法では長期の安静が必要となり、その間に肺炎や床ずれなどの合併症を併発し寝たきりの状態になることが少なくないのです。そのため、多くの場合で手術が必要になります。手術は術後のリハビリを円滑に進めるためにも、なるべく早期に行うことが大切です。ただ、手術をしたとしても元通りの歩行能力が得られる方は約半数と言われており、やはり骨折の予防が重要です。
 予防には二つの点が大切です。転倒の防止と骨を丈夫にしておくことです。実はこの骨折を起こす転倒は屋外より屋内で多く起こっており、運動習慣で体を鍛えるだけでなく、とっさにつかまることができる手すりの設置や、段差を減らし、滑りやすい敷物は使わないなど屋内環境の整備も重要です。
 60代の女性では約5人に1人が骨粗しょう症であると言われています。早期に治療すると、より効果が得られやすいため、検査を受けたことがない方は近くの病院で一度相談されることをお勧めします。十分な対策をし、ケガなく健康にこの冬を乗り越えましょう。(毎日新聞12月29日付)