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全身麻酔の合併症について

2022年3月4日

 全身麻酔は、手術に伴う身体や心のストレスから患者さんを守り、スムーズに手術を進めるために必要ですが、通常より眠りが深くなることや使用する薬剤の影響で、十分に呼吸をすることができなくなります。そのため、眠った後にビニール製のチューブを口から気管に通して酸素を送り込む必要があります。このチューブを通す操作を「気管内挿管」といいます。この気管内挿管のときに起こり得る合併症についてお話ししたいと思います。
 気管チューブを通すときには、金属の器具を使用し口を大きく開ける操作をするので、その際に歯が折れたり欠けたりする場合があります。ぐらぐらした弱い歯があると、損傷のリスクは大きくなります。また、手術が終わった後、麻酔から覚めるときに無意識に歯を食いしばると、通常より強い負荷がかかるため、歯が傷ついてしまう場合があります。これを「歯牙損傷」といいます。麻酔科医も細心の注意を払っていますし、手術前には歯科での診察もありますが、手術前の限られた時間では十分に処置をすることができない場合もありますので、日頃からかかりつけの歯科でケアを受けていただけるとうれしく思います。
 もう一つに、喉の痛みと嗄声(声のかすれ)があります。声を出す役割をする声帯という部分に気管チューブが触れるために起こります。通常は1週間程度で良くなることが多いですが、まれに回復まで時間がかかる場合があります。
 いざ手術となると説明される内容も多いと思いますので、全身麻酔で起こりやすい合併症として知っておいていただければ幸いです。