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糖尿病の方が人工透析にならないためにすべきこと

2022年5月27日

 日本では人工透析の患者さんが増え続けています。人工透析になる一番の原因は糖尿病です。そのため、国をあげて糖尿病の患者さんの腎臓機能悪化予防に取り組んでいます。国の取り組みは二つあります。一つ目は医療機関が行っている「透析予防指導」で、他の一つは保険者(自治体等)が行っている「重症化予防指導」です。どちらの取り組みも効果が表れてきています。

 全ての糖尿病の方の腎臓の状態は、以下のどれかに該当します。
 腎臓は、
①ほぼ正常
②尿に微量アルブミンが出ている
③尿に明らかに蛋白が出ている
④腎不全
⑤人工透析をしている。
 腎臓の状態は①から⑤に順番に悪化するため、糖尿病の方は自分が①から⑤までのどれに該当するか知ることが大事です。自分の腎臓の状態がどの段階か分からなければ、主治医の先生にご確認ください。

 まず医療機関での「透析予防指導」についてご説明します。以前は腎臓が悪くなったら元に戻らないと考えられていました。しかし、最近は生活習慣改善と治療により、④から③、③から②、②から①に改善できることが分かりました。生活習慣の改善の中で最も大事なのは食事の減塩です。肥満の方は減量も重要です。血糖をコントロールすることも大事です。減塩は腎臓の治療のみでなく高血圧の治療においても重要です。「醤油をじょぼじょぼかけない」、「麺類を食べる時には汁は飲まない」だけでもかなりの減塩になります。早速実行してみてください。
 最近、腎臓に対して大変効果的な治療薬が登場しました。腎臓から排泄される蛋白を減らしたり、腎機能悪化を予防する薬です。生活習慣改善と的確な投薬により腎臓の働きが良くなります。

 次に「重症化予防」について説明します。皆さんのところに特定健診受診の案内がきていると思います。特定健診はぜひ受けてください。特定健診の検査項目の中に糖尿病や腎機能の項目も含まれていますので、特定健診を受けると糖尿病かどうか、また腎機能が悪いかどうかが分かります。「重症化予防」は特定健診を受けることから始まります。医療機関を受診している方も特定健診は、ぜひ受けてください。健康保険が国民健康保険の方は、保険者(各自治体)が特定健診の結果を年ごとに追跡確認し、皆さんの体を見守ってくれています。希望すれば保健指導を受けることもできます。皆さんお一人おひとりに対して、医療機関、行政が力を合わせて人工透析にならない取り組みを行います。