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スポーツによる頭部外傷「脳振とう」について

2012年9月1日

繰り返し起こすと危険

もうずっと昔、ラグビーの試合で、選手同士が激しくぶつかり合い、頭部を強打して倒れてしまうことがありました。倒れた選手の頭にやかんの水をかけ、しばらくしてその選手は起き上がり、競技に復帰しました。選手にかけた水を「魔法の水」と称していましたが、何のことはないただの冷水でした。倒れた選手は、水を浴びて受け答えはできるようになったものの、試合の翌日、受傷後のことは全く覚えていないというようなことがありました。これが脳振とうです。

脳振とうには、うつろなまなざし、言語・運動反応が遅れる、意識混濁、集中力低下、時間・場所が分からない、つじつまのあわない発言、記憶障害、意識消失などの症状があります。そのような症状は一過性で、基本的には6時間以内に回復します。
以前は、脳振とうだけなら、のちのち後遺症が出たりはしないと言われていました。しかしながら、近年、スポーツにおいて短期間に脳振とうを繰り返すと大きな障害が出現したり、致命傷になることもあります。また、慢性的に脳振とうを繰り返すと、晩年後遺症に苦しむことが少なくないことが明らかになってきました。

スポーツ医学では、脳振とうの重症度を意識消失の有無と意識障害の持続時間で分類し、重症度によって競技への復帰過程を推奨しています。重症であれば、ある一定期間は運動を休止し、頭に影響しない運動から徐々に再開し、医師の許可を得た後、元の競技に復帰させます。
現在、脳振とう受傷時に競技への同日復帰は禁止されており、冒頭例のような「魔法の水」による同日復帰はあり得ません。

一方、脳振とうの症状が一過性でも、CTやMRIによる画像検査で、脳損傷や頭蓋内血腫が発見されることがあり、その後の対応が全く変わってしまうことがあります。

頭部を受傷し、意識障害や意識消失があったり、頭痛やめまいが続く場合などは、速やかに専門医を受診しましょう。