病気について知る病気辞典

妊娠糖尿病をご存じですか?

2012年10月20日

ひと昔前まで、糖尿病は贅沢病であり、一般庶民には縁遠いものと考えられていました。しかし、戦後の復興を乗り越えた頃から、食事や生活に大きな変化がもたらされ、今や日本の隅々にまで、糖尿病は浸透しています。
なぜ、短期間で、これほどまでに糖尿病が増えてしまったのでしょうか?

様々な原因がありますが、ひとつは“栄養の取りすぎ”、そしてもうひとつは“運動不足”です。
人類の長い歴史は、飢餓の繰り返しでしたが、私達の祖先は「余分なエネルギーを脂肪として蓄える」ことで、生き延びてきました。
世界の先進諸国は、この数十年の間に飽食の時代を迎えましたが、私達の体は空腹には対応できても、食べ過ぎには対応できません。結果として、体に溜まった脂肪が体に悪影響を及ぼし、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をもたらすのです。

生活習慣病は、最近メタボという呼び名で広まっていますが、この病気は中高年だけのものではありません。20~30代の成人はもちろんのこと、高校生や中学生、果ては小学生にまで広がるきざしを見せています。
特に問題となるのは妊婦さんであり、「8人に1人は妊娠糖尿病の可能性がある」と言われています。妊娠糖尿病は、“妊婦さんのメタボ”と言ってもいいでしょう。ただし、一般のメタボと違い、腹囲や体重など、体格はあまり関係ありません。メタボ生活を送っていると、モデルさんのようなスタイルでも、妊娠糖尿病になってしまう方がいます。

糖尿病には、大きく4つの種類があります。
妊娠糖尿病はそのうちのひとつですが、厳密に言えばこの名前は糖尿病ではなく、“糖代謝異常”と呼ばれる状態を指しています。糖代謝異常というのは、一般の方には耳慣れない言葉だと思いますが、名前が示す通り、糖の代謝がうまく行っていない状態を意味しています。血糖値が、糖尿病というほどまでには高くないけれど、本当に健康な人に比べると、わずかに高めの状態が妊娠糖尿病です。

一般的な糖尿病では、絶食時(12時間以上)の血糖値の場合、126mg/dL以上の時に診断されますが、妊娠糖尿病では92mg/dL以上で診断されますから、その差は34mg/dLもあります。一方、健康な人の絶食時の血糖値は99mg/dL以下と言われていますから、妊娠糖尿病はほとんど正常レベルであることが、お分かりいただけるかと思います。

それでは、なぜ妊娠糖尿病の診断基準は、ここまで厳しいのでしょうか?その理由は、大切な赤ちゃんとお母さんを守ることにあります。最近の研究から、妊婦さんの場合、わずかな血糖値の上昇が、赤ちゃんやお母さんの体に大きな負荷をかけることが、明らかになってきたからです。

健康な人と大差がない妊娠糖尿病を早期に発見するためには、精度の高い検査が必要となります。
現時点で最も有効な検査方法は、糖負荷試験と呼ばれるものですが、これは炭酸ジュースを飲んで、血糖とインスリンの変化をみる検査です。

将来、出産を考えておられる女性の方々は、自分のためにも、未来の子どもさんのためにも、ぜひ一度この糖負荷試験を受けられることをおすすめ致します。