病気について知る病気辞典

身体が縮こまった、浅い呼吸をしていませんか?〜呼吸とつながる、心と身体の健康〜

2012年12月15日

日本語には「呼吸をつかむ」とか「息が長い」「息を合わせる」といった呼吸や息に関する言葉がたくさんあります。
剣道、空手、茶道、能などの中でも、「呼吸」は極めて大切なものとして伝えられています。しかし、私たち現代人の多くは普段の生活の中で「呼吸」を意識することはほとんどないのではないでしょうか。

テレビドラマ水戸黄門の入浴シーンで人気のあったお銀ちゃんこと由美かおるさんが、毎日行って若さを保っていると話題になった呼吸法を私も学んでいました。今でも、外来の診察時にそれとなく患者さんの呼吸を観察することがあるのですが、浅い呼吸(横隔膜が十分に動いてない呼吸)の方が多いようです。

呼吸の異常で有名なのが「過換気症候群」で、これは換気量が増加します。以前はペーパーバックを口に当てていましたが、最近は安静にすることが治療の基本です。逆に換気量の低下する症状は、中枢性や末梢性の神経疾患や筋疾患、呼吸器疾患などにみられますが、これは設備の整った病院での検査が必要です。

最近、「ムカツク」という言葉が若い人たちを中心に使われています。「ムカツク」とは、みぞおちが固くなって胸につかえるという感覚ともいえます。息を浅く吸ってばかりいて、心身が平静な状態になれないのが原因の一つと考えられます。それでは、どんな呼吸が理想と考えられるでしょうか。理想の呼吸とは、寝ている赤ちゃんの呼吸で、呼吸によって体全体が大きく波打っています。言ってみれば内臓がゆったりと動く呼吸です。のどや胸でするのではなく、内臓全体で呼吸するようなイメージで、実に自然です。

私たちも普段の生活の中で、時には自分の呼吸を観察してみてはどうでしょう。私もそうですが、忙しさに追われると、呼吸は浅く、リズムも乱れがちです。一時期、呼吸法を含む身体系の技法が“危ないもの””うさん臭いのではないか”と警戒する社会の目があったのも事実です。しかし、最初にもご紹介したように、日本文化に深く伝わる「息の文化」を忘れてしまうのも、もったいないと思います。

「声に出して読みたい日本語」で有名な明治大学文学部教授の齋藤孝氏は「鼻から3秒息を吸って、2秒お腹の中にぐっとためて、15秒かけて細くゆっくり吐く」これを6セット2分間続ける、という呼吸法を提唱されています。呼吸の基本の「型」として、とても素晴らしいものだと思います。

具体的には、必ず息を「ためる」時間をとることと、ゆっくりと少しずつ息を吐くのがポイントです。まず、吸う時には、必ず鼻から息を吸います。鼻から吸うことで、脳に酸素が行き渡りやすく、意識は覚醒し精神は安定します。吐くときも、鼻から吐くのがいいのですが、意識的に長くゆるく吐く場合は、はじめのうちは口をすぼめて口から吐く方が行いやすいです。最初は15秒吐くというのは大変苦しいです。むきにならずにやってみてください。(この拙文は齋藤先生の「呼吸入門/角川書店」を参考にしています。興味のある方は一読されてはみてはと思います)。

誰でもしている呼吸ですが、健康と深く関係しているようです。