病気について知る病気辞典

太ももの付け根がふくれたら~リンパ節炎、がん、そけいヘルニアなど

2013年5月4日

太ももと腹の境目の部分を“そけい部(鼠径部)”といいますが、ここがふくれることは珍しくありません。いろいろな原因があり、中には急を要すものもありますので注意が必要です。今回はふくれ方から病状を予測して、受診を急ぐべきかお話します。

痛みがあり、日に日に大きくなる場合は、リンパ節(リンパ腺)の炎症が考えられます。
数日前に同じ側の足を怪我したことはありませんか?発熱はありませんか?今日明日にでも外科を受診し、化膿していたら処置や抗生物質の処方を受けてください。ネコなどの動物に咬まれたりひっかかれたりして忘れた頃に起こることもあります。

痛みがなく、目立った変化はないけれども、何週間か前に比べると大きくなってくる場合は、悪性(がん)の可能性があります。特に2個以上だったり硬いときには、数日以内に内科を受診してください。また、排便排尿や婦人科的異常はありませんか?精密検査が必要かもしれません。

長い時間立っていたり、夕方ふくれているけれど、手で押さえたり、朝になると消える場合は、ヘルニアかもしれません。ヘルニアと聞くと、腰のヘルニア(椎間板ヘルニア)を思い浮かべる方が多いでしょうが、まったく関係ありません。脱腸と言うとピンと来るかもしれません。

この場合は、生まれつきや長年の腹圧により、そけい部の筋肉に弱いところができ、そこから腹膜(腹の内臓を包む膜)が皮膚の下まで袋状にのびてきて、その中に腸などの内臓が出たり戻ったりする状態です。人間が立って歩くようになった宿命でしょうか。ふくれが簡単に消える場合は急ぎませんが、近いうちに外科を受診してください。後で述べる嵌頓(かんとん)の状態になると急を要しますので、痛みがなくても治療は必要です。

治療は根本的には手術しかありません。子どもの場合にはのびた腹膜の根元をしばるだけですが、大人の場合は筋肉の弱くなった部分を補強する必要があります。最近は合成繊維でできた網目状の布(メッシュシート)で補強するのが一般的です。そけい部を5~6cm切開するだけなので脊椎麻酔(下半身麻酔)でできます。また、腹腔鏡下手術(カメラで見ながら腹の内側からする手術)も普及しつつあります。全身麻酔が必要で、手術時間は少し長くなりますが、術後の痛みが少なく、切開が小さいなどのメリットがあります。

ふくれが消えなくなったものを嵌頓といい、場合によっては命に関わります。内臓が出たまま戻らなくなった状態で、出ている内臓の血のめぐりが悪くなって、ますます戻りにくくなり、腸が破れる心配があります。すぐにかかりつけ医に連絡するか、救急病院を受診してください。救急車を呼ぶほどではないでしょう。緊急手術になるかもしれませんので血液サラサラの薬を飲んでいる方は、必ず告げてください。