病気について知る病気辞典

先行イメージに、つい惑わされがちな病気~「統合失調症」をご存じですか

2013年7月6日

『統合失調症』、かつては『精神分裂病』と呼ばれていた疾患です。

以前は不治の病と考えられていましたが、この十数年で薬の開発も進み、現在では社会復帰も難しくありません。有病率は世界各国でそれほど変わらず、1~2%、つまり50~100人に一人という極めてポピュラーな病気でもあります。松山市の人口が約50万人ですから、市内だけで少なくとも5000人の患者さんが存在するという事になりますね。われわれ精神科医にとって、もっとも多く出会う病気のひとつ、とも言えます。

さて、これほどポピュラーな病気でありながら、あまりその実態が知られていないのはどうしてでしょうか。この病気があまり公然と語られないのは、やはり「突然暴れ始める」「何をするか分からない」といった悪いイメージが原因だと思われます。しかし、そういったごく少数例のイメージが先行して、これだけ頻度の高い病気についての知識が社会的に知れわたっていないことは非常に残念です。

統合失調症の好発年齢は20代と言われています。男女差はほとんどありません。初期症状が明確でないことが多く、全身倦怠感や意欲の低下など、いわゆるうつ病とよく似ていることもありますが、突然幻覚や妄想が現れる「急性発症」と言われるタイプのものもあります。幻覚は「人の声が聞こえる」といった、いわゆる幻聴であることが多いようです。ただ、これらの症状は他の精神疾患で見られることも多いので、診断にはこの病気の特徴をつかんでおく必要があります。

統合失調症の特徴を一言で表現しますと、「自我の障害」です。少し難しい言葉ですが、要するに、「自分」と「他人」の境界が分かりづらくなる、ということですね。普段、私たちは考えごとをするときに「これは誰の考えだろう?」と疑問を持ったりはしません。ところが、この病気では「自分の考え」という確かさが減ってしまうのです。初期的な症状では「自生思考」(勝手に考えがわいてくる感じ)や、「思考化声」(考えたことがそのまま声になって聞こえてくる)といった症状が現れます。また、「思考伝播」と言って、自分の考えが他人に漏れて伝わるテレパシーのような感覚が出現します。この症状が進むと「個人情報が盗まれている」「プライバシーを盗聴・盗撮されている」などといった被害妄想がしばしば見られます。

症状が進行すると、「会話性幻聴」(考えたことに答える形での幻聴)や命令調の幻聴、さらには「○○という組織が私を狙って見張っている」などといった物語のような妄想がみられるようになります。この状態では、しばしば正常な判断力が失われています。

幻聴や妄想の現れかたには個人差があり、どちらか一方の症状しか見られない事もあります。もし自分や家族にこういった症状が見られたら、すみやかに心療内科や精神科を受診するようにしましょう。