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“したたかに老いる”老化への戦略~関節リウマチの治療を通して感じたこと

2013年11月26日

関節リウマチは、一つの関節のみならず、多関節に炎症・障害をきたす疾患です。昨今、薬物療法の進歩のおかげでこれらの炎症の沈静化が充分に行える時代となりました。私も早いもので20年近くリウマチ診療を続けており、その変遷に身を置いてきました。

日常診療では、関節リウマチにとどまらず、加齢によって起こる変形性脊椎症や変形性関節症なども診てきており、加齢がもたらす別の側面、“心への影響”にも数多く遭遇してきました。昔ほど思うように動けないという、“加齢に伴う喪失感”です。

この喪失感、「老い=失われて行くさみしさ」は、①身体的喪失感と②社会的喪失感に分けられます。身体的喪失感は身体能力の低下によるもので、諦念(あきらめ)も入ります。診察室では「年だからしょうがないですね」とか、「神様が、人間の運動器は70年くらいの耐用年数で設計したものだから、耐用年数を越せばガタもきます」など、お決まりのフレーズで表現されるかもしれません。

社会的喪失感は、仕事から離れ、「毎日が日曜日」な状態、あるいは独居の空間に閉じ込められてしまうな状態の時に感じます。このように社会的・心理的にも喪失感が著しい時には、老化が加速するようです。喪失感で「いつお迎えがきても…」なんて弱音を吐いて過ごし、老化を進めてしまうのはもったいないですよね。

長年、リウマチの患者さんと接するなかで、多関節機能障害を克服してうまく日常生活動作をこなしていく様子に敬服しつつ、その”したたかさ”を見て学び、励まされてきました。そして、これからの関節疾患の治療は、運動器疾患の中でも多くの関節を患うリウマチの治療をベースに考えていってよいのではないか、リウマチの治療デザインはユニバーサル(普遍的な)デザインとなり得るのではないと感じています。

“したたか”という言葉ですが、最近は聞かなくなりましたが、伊予弁の「こすい(=ずるい)」のようなイメージがあります。しかしここでは生物が生き抜くための”粘り強さ”に当たります。自然界では細菌が薬剤への耐性を獲得したり、昆虫が体を七色に変化させたりと、戦略は実にしたたか。私たちも喪失感に対しては「したたかに老いる」戦略を立てましょう。まずは神様が作り上げた人間の耐用年数”70”年に向けて、気持ちから盛り上げていきませんか。

体についても「動かなさ過ぎ」と思える程の運動不足では、関節は拘縮(関節の動く範囲が狭くなること)していきます。関節では、関節滑膜から産生される関節液が関節軟骨に栄養を与えています。関節液の量は体を循環する血液量と関与しており、スムーズに動くためには関節を適度に動かす必要があります。いつまでも関節を活動させることで、美しく舞い躍動できる運動器を保ちたいですね。年を重ねてもモチベーションを高めつつ、したたかに老いていきましょう。老化はスポーツだ! がんばっていきまっしょい!