病気について知る病気辞典

傷の消毒について

2015年3月1日

傷は消毒せず、洗い流すことがポイント

最近手術をした患者さんに術後の処置の仕方を説明していると、よく言われる言葉があります。「消毒はしなくていいんですか?」「傷を濡らしてもいいんですか?」

昔は傷を消毒して化膿(かのう)しないようにするという考えが常識となっていましたが、十数年前より傷を消毒するメリットは少なく、かえって害になることもあることが分かってきました。

消毒の目的は、傷の表面にいる菌を殺して感染を防ぐことです。そもそも正常な皮膚の表面にも菌はいて、悪さをせず人間と共生しています。傷の表面に細菌がいても悪さをしている状態でなければ、菌を殺しても何の効果もありません。また、細菌が増えるスピードは速いので、すぐに元の数に戻ってしまいます。その上、消毒薬は傷を治すために出てきた良い細胞まで傷つけるので、かえって傷の治りを悪くする可能性があります。

これに対し、細菌が増殖して組織の中に侵入して悪さをしている状態が感染(化膿)です。この場合、消毒薬を使用することに関してはまだ賛否両論あります。ただ、傷の中に砂やゴミなどの異物・死んだ組織などが残っていると重篤な感染を起こす危険性があるので、自分の判断だけで処置せず、専門機関を受診しましょう。

つまり、手術で縫合した傷や感染徴候のない褥瘡(じょくそう)、皮膚潰瘍など、病院から自宅での処置を勧められるような傷には消毒の必要は全くありません。ただ消毒しないと心配といわれる人もまだ多く、患者さんを安心させるために薄めた消毒薬で消毒を続けている医師もいるそうです。また、われわれ医療関係者も実際は消毒薬を使用していないにもかかわらず、傷の処置のことを「消毒」と言ってしまうことがあり、反省させられます。

現在の傷の処置は、消毒しない、傷の周りをせっけんの泡で洗いシャワーで傷を洗い流す、傷を乾燥させないようにする、が基本です。是非覚えておいてください。