病気について知る病気辞典

サイレント キラー 卵巣がんのお話

2015年5月2日

“サイレントキラー”とは、《静かな殺し屋》という意味で、大辞泉によると、「病気と分かる症状があらわれないまま病状が進行し、致命的な合併症を誘発する病気のことで、高血圧、脂質異常症、卵巣がんなど」、とされています。今回は“サイレントキラー”卵巣がんのお話です。

女性にとって卵巣は、次世代を担う卵子をたくわえ、また女性らしさを保つ女性ホルモンを分泌するなど、大切な役割を担っています。卵巣自体は、年齢やホルモンのリズムに合わせダイナミックに変化をしていますが、そこにできもの(腫瘍)が発生することがあります。卵巣にできる腫瘍には様々な種類があり、その1割が悪性です。
一般に“卵巣がん”といえば卵巣表面の上皮ががん化したものをさし、卵巣にできる悪性腫瘍の9割がこのタイプです。日本では卵巣がんの発生頻度が徐々に増加しており、現在年間約9000人の方が新たな卵巣がんと診断されています。

卵巣は腫瘍ができて大きくなっても周囲への圧迫症状などが出にくく、ほとんど自覚症状なく進行します。そのため、卵巣がんが見つかったときはすでに進行していることが多く、同じ婦人科がんの子宮頸がん、子宮体がんに比べ患者数は少ないのに死亡者数は多いことから“サイレントキラー”とよばれています。

子宮がん検診で、早期の子宮頸がんや前がん病変がみつかるように、自覚症状がない卵巣がんを早期で見つけるには“検診”が有効そうに思われますが、これまで行われた卵巣がんの検診で、死亡率が減少する有効な検診方法は確認されていません。その理由は、卵巣がんは進行が速いことが多く、たとえ検診で異常がなくても半年後には進行がんで見つかることがあるからです。

このように卵巣がんは厄介な病気ですが、最近の治療の進歩で治療成績は徐々に改善されてきています。卵巣がんの治療で大切なことは、手術で病巣をできるだけ除去すること、適切な抗がん剤治療を受けることです。

ここで問題となるのは、病状の進行した卵巣がんに行う大きな手術や抗がん剤治療は“もろ刃の剣”で、体に大きな負担がかかり、治療による副作用も大きくなることです。しかし、逆に副作用を恐れて病巣を取り残したり、少量の抗がん剤投与では最大の効果は引き出せません。そのため手術や抗がん剤治療の“さじ加減”が大変重要となり、治療効果も変わってくるのです。卵巣腫瘍が疑われる場合は、悪性かどうかの診断も含め、専門医を受診することをおすすめします。

新しい治療方法も日々開発されてきており、これらを駆使し、副作用をマネージメントすることで、治療中でもより良い生活が送れるような工夫もなされるようになってきました。卵巣がんの治療は、病状によっては治療の期間が長くなることもあるため、目標を持って療養されることが重要となります。