病気について知る病気辞典

がんの痛みは、我慢しないで〜医療用麻薬を正しく理解しましょう〜

2015年8月1日

人口の高齢化に伴い、日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで命を落とすと言われています。がんは人の命を奪う病気で、多くの人ががんになることを恐れていますが、病院で多くのがん患者さんに接していると、「痛みだけはないようにして欲しい」と言った言葉をよく聞きます。多くの患者さんが実際に恐れているのは「がんの痛み」のようです。

疼痛はがんの主要な症状の一つで、進行したがん患者さんの約70%、治療を受けている時期でも30%の方に認められます。1986年、WHO(世界保健機構)は、弱い鎮痛剤から徐々に強い鎮痛剤に移行する「WHO方式がん疼痛治療法」を発表しました。この方法は、各国の臨床研究で80%以上の鎮痛効果が確認されている、非常に優れた鎮痛法です。がんの症状には、食欲不振、体重減少などもありますが、これらには特効薬がありません。実は多くの人が恐れている「痛み」が、がんの症状の中では一番治療法が確立している症状なのです。

がんの痛みを恐れる一方で、痛みを我慢する患者さんもいらっしゃいます。その理由の一つとして、医療用麻薬への誤解があります。麻薬には「寿命が短くなる」「最後の薬で、これを使うと後がない」「頭がおかしくなる」そして「だんだん使用量が多くなって最後は廃人になる」と言ったイメージがありますが、暴力団が使用する覚醒剤と医療用麻薬を混同されている方が多いようです。これらのイメージは全て誤りです。医療用麻薬は適切に使用すれば、寿命を縮めたり中毒になったりすることがないことは、多くの研究で証明されています。

医療用麻薬には、注射薬、内服薬、座薬、貼付剤の4種類があります。貼付剤というのは、24時間あるいは72時間おきに張り替えるシール製剤で、胸やお腹などの脂肪が多いところに貼る薬です。これらの薬には、長く効く「徐放性タイプ」と速く効く「即効性タイプ」があり、通常この2つのタイプの薬を使い分けます。「徐放性タイプ」は緩やかに効き始めるのですが、この特徴は長所でもあり短所でもあります。がんの痛みには波があるため、強い痛みが来たときに「徐放性タイプ」を使っても間に合いません。この波を「2、3時間我慢すれば良い」と話される方もいますが、このとき「即効性タイプ」を服用することで、1日中痛みがなく過ごすことができます。

「がんの痛み」は自覚症状であり、病院の採血やCTなどの画像検査で症状の強さを判定する事はできないため、患者さんの訴えで痛みの強さを判定します。日本人には我慢するという習慣があり、薬はなるべく多く飲まない方が良いという考え方があります。しかし「がんの痛み」に関しては、我慢すべきではありません。無治療の期間が長いほど、その痛みを神経が記憶してしまい痛みを取り除くことが難しくなります。早い時期から適切にコントロールすることで、結果として最低限の薬の量で痛みを取り除くことができ、充実したより良い生活に繋がります。