病気について知る病気辞典

がん治療と就労支援

2015年11月1日

もし、がんと告知されたら。

がん患者さんを診療していると、治療を契機に仕事を辞めたという人が少なくありません。職を失った患者さんたちの手助けができないかと、複数の企業経営者に再就職の受け入れを打診したのですが、良い返事は得られませんでした。会社経営を考えると、退職者より新卒を採用せざるを得ないとのことです。就労支援を断念しかかっていると、ある日入浴しながらふと思いつきました。「そうだ、患者さんが仕事を辞めないように勧めればいいんだ」。

まず、がん患者さんの就労状況を調べてみました。「癌患者の就労と家計に関する実態調査2010」(CSR project)によると、がんと診断された後、少なくとも3割は職を失い、16%は依願退職しています。また、がんと告知されてすぐ退職していることもわかりました。実際、告知した次の診察で辞職しましたと言う人が多いように感じます。患者さんは「治療に専念したいから…」と言いますが、実は告知直後に心が落ち込む時期があり、その時期に辞職を決断してしまうのだと思います。また、会社から解雇されている人も少なからずいます。

以上のことを踏まえて、私は告知の日に就労者には以下の3つの項目を伝えるようにしました。①辞職しようと思っても、その判断は先送りすること②再就職は非常に困難であること③会社側に退職を勧められた場合、私が会社の人事担当者と面談することも可能―です。

この試みを始めて2年になりますが、辞職する人はほとんどいなくなりました。現在は、学会発表や講演を通じて、がん告知に関わる先生方に上記の項目を伝えてもらうようにお願いしています。みなさんも友人からがん治療と就労に関して相談を受けたら、伝えてあげてください。

がん治療に伴う退職がなくなる社会になるように願っています。