病気について知る病気辞典

認知症と自動車運転

2016年6月1日

いつまで運転しますか

警察庁の『交通事故統計』(昭和23年~平成27年)によると、全国の交通事故件数は、平成21年の71万件余をピークに年々減少していますが、高齢者の事故は、増加する傾向にあります。中でも、高速道路の逆走は大きな社会問題となっています。

高齢になると視力や聴力などの感覚器の加齢変化に加えて、とっさの判断力や注意力も低下します。「車道と歩道を間違えた」「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」など、歩行者を巻き込んだ事故も多く、認知症との関連が指摘されています。

運転免許更新の際に、75歳以上の人は高齢者講習の前に講習予備検査を受けます。この検査は、記憶力や判断力を測定するものです。「認知症の恐れあり」と判定され、過去1年間に「信号無視」「一時不停止」などの特定の交通違反があった場合には、医師の診断を受ける必要があります。

近年、認知症対策が強化され、認知症を疑われた場合には、適宜医師の診断が義務づけられることになりました。認知症と診断された場合は、免許停止か取り消しとなり、受診しなかった場合も処分対象になります。

これらの社会情勢を受けて、運転免許を返納する高齢者が増えています。返納すると、希望者には「運転経歴証明書」が交付されます。これは、身分証明書として無期限に使用可能で、自治体によっては交通機関の運賃割引や協力店舗などでの優遇が受けられます。

ただ、地方都市や山間部では、車が高齢者と社会をつなぐ接点になっているのも事実で、日常生活への支障も懸念されます。運転をやめたことで、意欲低下などの「抑うつ症状」が出現したという報告もあります。

アルツハイマー病では「行き先忘れ」「車庫入れ失敗」が多く、レビー小体型認知症では「信号見落とし」、前頭側頭型認知症では「接触事故」「信号標識無視」「わき見・注意散漫運転」などが多く見られます。安定剤や睡眠剤を用いている場合には、当然薬剤の影響も受けます。

日ごろから、ご自身はもとより、家族の方も体調管理に気を配り、安全で快適な運転を心掛けてください。不明な点は、専門医療機関に早めにご相談を。