病気について知る病気の解説

耳、鼻、のどの、 総合的健診のすすめ

2026年5月8日 NEW

さえき耳鼻咽喉科クリニック 佐伯克哉 先生

 耳が痛くて耳鼻咽喉科に行った時、鼻とのども診察されて不思議に思ったことはありませんか? これは医師の単なる流れ作業的な診察というわけではありません。実は耳、鼻、のどはそれぞれ位置的にも機能的にも密接につながっており、ある部位の異常が他の部位に影響しやすく、耳鼻咽喉科では耳、鼻、のどを一体として診察することが重要なのです。

 まず耳の代表的な病気として、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)があります。これは鼓膜の奥に液体がたまる病気で、特に小児に多くみられます。痛みはありませんが耳がつまる症状があります。原因の多くは鼻の奥と耳をつなぐ耳管という、主に気圧を調節するトンネルの機能低下です。かぜや鼻炎になると鼻水や粘膜の腫れで耳管がつまり、耳の換気が悪化します。その結果、滲出液がたまり、難聴や耳のつまり感を生じます。滲出液に細菌がいれば、痛みを伴う急性中耳炎になることもあります。つまり耳の病気であっても、背景には鼻の炎症が存在することが少なくありません。

 次に鼻の代表的な病気として、副鼻腔炎があげられます。顔の骨の内側にあって、鼻に通じている副鼻腔という空洞に膿がたまったり、粘膜が腫れて鼻づまりや後鼻漏(鼻水がのどに流れる)を引き起こします。後鼻漏は長引く咳や痰の原因となることもあります。また、鼻づまりが続くと口呼吸となり、のどの渇きや口の中の炎症を生じます。さらに副鼻腔炎は鼻の奥で前述の耳管に影響し、滲出性中耳炎を合併することもあります。このように鼻の病気は、のどや耳へ連鎖的に影響します。

 のどの代表的な病気としては、扁桃炎があります。扁桃はのどの奥にあるリンパ組織で、人の感染防御に関与します。細菌やウイルス感染で腫れると、のどの痛みや発熱を起こします。扁桃炎によりのどが腫れると近くの耳管も影響を受け、急性中耳炎や滲出性中耳炎を生じることがあります。また炎症が鼻へ波及すれば鼻症状も悪化します。

 このように、耳、鼻、のどはそれぞれつながっており、症状が1カ所に見えても、原因が別の部位にある場合も少なくありません。耳鼻咽喉科ではこの3カ所を同時に観察し、少しでも異常が疑われれば内視鏡や聴力検査などを組み合わせて総合的に診断します。実際、滲出性中耳炎の詳しい検査で、のどの癌が早期に見つかった例もあります。耳、鼻、のど、どこかに不安を感じれば、健診的な意味でも、一度総合的に診察を受けることが大切です。