患者さんから聞かれる素朴な疑問 「全身麻酔中に目が覚めませんか?」
2023年2月17日
患者さんに全身麻酔の説明をすると、「途中で麻酔が切れて目を覚ましませんか?」と質問されることがあります。歯医者さんで局所麻酔をするように、最初に麻酔薬を注射するだけと思われている患者さんが多いからかもしれません。
一般的な全身麻酔の方法では、手術中も常に麻酔薬を点滴から注入したり、吸入麻酔薬を吸わせたりして、痛みを感じたり目が覚めたりしないようにしています。
しかし、想定以上の強い手術侵襲(痛み)が加わることや、何らかのトラブルで麻酔薬が投与されない事態により目が覚めてしまう“術中覚醒”を起こす可能性が常にあります。発生頻度は0・1%程度といわれますが、手術中に夢を見た場合も術中覚醒として分類する報告もあるため、心配するような“手術中の記憶がのこる”可能性はもっと低いと思われます。しかし、ゼロではありません。手術中に簡易的な脳波測定をして眠りの深さを監視すると、術中覚醒の発生率を半分にできるといわれていますが、これもまた万全とはいえません。
われわれ麻酔科医は、術中覚醒の可能性を限りなくゼロにするために、麻酔薬を投与する機械が問題なく動作しているか、患者さんの血圧・脈拍などに異常な変化がないかなどを確認し、さらには手術内容を理解し、強い侵襲(痛み)が加わるタイミングを見計らって麻酔薬の投与量を増やすなど、慎重な麻酔管理を絶え間なく行っています。
全身麻酔で手術をする患者さんの不安を少しでも減らすことは、麻酔科医の大事な仕事です。不安なことはぜひ担当麻酔科医に質問してみてください。