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キズの正しい対処方法 ~まずは流水で洗いましょう~

2023年2月17日

 日々、外来でひどく化膿してしまったキズを診ていますと、ケガをした日から一度も洗わず、毎日消毒だけをしているという患者さんが非常に多くいらっしゃいます。伺うと、キズは「濡らしてはいけない」、「洗ってはいけない」ものだと思っていた、と皆がおっしゃいます。
 我々からみますと真逆なのです。キズの正しい対処方法はまず「流水で洗う」、すなわち清潔に保つことが一番大事であると考えています。

 人間は皮膚にキズを負うと治すためにジクジクした液体(浸出液)が出てきます。この浸出液の中には自己修復細胞が多く存在します。消毒液はこの細胞を殺してしまうので原則使いません。キズに砂や雑菌があると細菌が繁殖し化膿する原因となります。化膿しないまでも傷口に雑菌が残ったままだと治癒力が発揮できず、完治するまで長引く場合があります。異物や雑菌を取り除くために、まずキズを洗うのです。昔は、キズは濡らしてはいけないなどの概念が広まっていましたが、創傷治癒の考えが進んだ現代ではまず「流水で洗う」、これが最も重要と考えられています。

 小さなお子さんや高齢者の方がこけてケガをすることがあります。キズが浅く自宅で応急処置をする場合には、まずは流水で洗ってあげてください。石鹸やボディーソープを使用しても大丈夫です。洗うことにより砂や土、血液などが取り除かれれば自己修復機能を高めることができるのです。キズを清潔に保つことができれば、その後の経過によい影響を及ぼします。また、自宅で洗った後は傷口を保湿することが大切です。新しいワセリン等の軟膏があればつけてください。皮膚を清潔に保ち乾燥を防いで(湿潤環境)あげれば、皮膚本来の自浄作用で治りを早め、きれいに修復する効果があるのです。
 また、料理中や家での軽いヤケドなどもまずは流水で冷やすことが大切です。ヤケドの場合は徐々に深くなることがありますので、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。

 最近では介護の問題から褥瘡(床ずれ)の治療方法を質問されることがあります。基本的には、
 ①患部に圧がかからないようにする
 ②よく洗い清潔に保ち乾燥を防ぐ
 です。
医師が処方した軟膏やドレッシング材(※)を用い湿潤環境に保つことが大切です。
 他にも動物にかまれた、虫に刺された等、ケガは多くあります。中には早急に対処しなければならないものもありますが、基本的には患部をよく洗い、そのあと医療機関を受診することをお勧めします。適切な処置がその後の治療期間を短くし重傷化を防ぐことになりますので、おろそかにはできません。
 キズの正しい対処方法は、まずは流水で洗う、そして保湿をすることです。出血が多い、浸出液が長く続いたりする場合など、心配なことがありましたらお近くの医療機関の受診をお勧めします。

※キズにおける湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材。従来のガーゼは除く