病気について知る病気の解説

タマタマ(睾丸)が痛い! 急いで病院に連れて行ってください!

2024年5月17日

愛媛県立中央病院 泌尿器科 松村正文 先生

 

 

皆さん、「精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)」という病気をご存じでしょうか。

精巣、つまり男の子の睾丸、タマタマがくるっとねじれてしまう病気です。

精索という精巣につながる血管がくるっとねじれるために精巣への血流が遮断され、精巣に血が流れなくなるので、そのまま放置すると精巣が死んでしまいます(壊死と言います)。 

そうです。この病気は急いで治してあげないといけない病気、緊急を要する病気なんです。

どれくらい急ぐ必要があるかというと、その時間は約6時間。一般的に約6時間以内に血流を回復させてあげれば、精巣を回復させることができると言われています。

男は大変ね~と思った女性の方、お母さん、おばあちゃん、他人事ではないんです。精巣捻転症の65%は思春期年齢の12~16歳に起こり、10%は新生児期(生まれて1カ月までの時)に起こるとされている子どもに起こりやすい病気なんです。その頻度は25歳以下の4000人に1人と言われています。

症状としては、約90%に突発的な強い陰嚢痛(陰嚢〈いんのう〉とはタマタマの袋のことです)が起こります。陰嚢痛のほか下腹部痛や悪心・嘔吐の症状が出ることもあります。思春期だと恥ずかしがって、陰嚢の痛みを言わず、急性虫垂炎と間違えられそうになることもあります。陰嚢が腫れたり赤くなったり、精巣が固くなったり、精巣の位置が高くなるなどの症状が出ることもあります。

治療方法は、緊急手術で精巣のねじれを解除してあげることです。ねじれを解除することで精巣の血流が改善して精巣の色が改善すれば、そのまま精巣を陰嚢内に戻し、再びねじれることがないように陰嚢内に固定する手術もします。残念ながら、ねじれて時間が経ちすぎていると、ねじれを解除しても精巣の色は改善しません。その場合には死んでしまった(壊死した)精巣として精巣を摘出しないといけません。ですから、子どもが突然、陰嚢が痛いと言い出した時には、明日まで様子をみようではダメです。急いで救急病院を受診してください。

もちろん陰嚢が痛くなる病気がすべて精巣捻転症ではありません。感染症(精巣上体炎)などでも陰嚢が痛くなったり高熱が出たりすることもあります。

診察によって、精巣捻転症が否定されることも多いですが、皆さんにはこの精巣捻転症を覚えておいていただいて、急に陰嚢の痛みが出た場合には「急いで病院に行く」、「連れて行く」必要があることを忘れないで下さい。