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がん術後のむくみ・リンパ浮腫について

2024年7月19日

四国がんセンター 形成外科  山下昌宏 先生

体の水分の通り道として血管やリンパ管という管があります。リンパ管はリンパ節という組織に繋がっており、リンパ節は体の特定部位に集合して存在しています。リンパ節は細菌やウイルス、がん細胞などをせき止める役割をはたしています。

 がん治療での手術の一つに、集合しているリンパ節を一塊にして摘出する、リンパ節郭清(りんぱせつかくせい)が行われることがあります。がん細胞がリンパ管を通って他部位に移動してしまう場合があるためです。乳がんの場合は腋窩(えきか)リンパ節郭清、婦人科がんの場合は骨盤内リンパ節郭清などがあります。

 リンパ節郭清が行われるとそのリンパ節が担っている部位での体液を流す能力が低下します。流れが悪くなるとリンパ液がその郭清部位周囲で溜まりやすくなります。
その状態が続くと浮腫となり、むくみが生じて来ます。
 例えば乳がんの場合は腋窩リンパ節郭清後、手術側の上肢のむくみが起こる可能性があります。婦人科がんの場合は骨盤内リンパ節郭清後、下肢のむくみが生じる場合があります。
 浮腫の程度は個人差があり、軽い違和感がある程度から明らかに周径差を生じる段階まで様々です。リンパ浮腫は慢性的に進行していくので長く付き合うことになります。手術して何年も経ってから症状があらわれることもあります。

浮腫の対処、治療
 リンパ管の流れが悪くなった状態を直接的に治す方法はなく、たまってしまっている流れを誘導してやることが必要になります。当院で行っている方法としては以下の3つが挙げられます。
①リンパドレナージ
 用手的に、肌をさするように、ゆっくりと優しく行います。皮下にたまっているリンパ液を適切に流すことを目的とします。強く揉んだりするマッサージとは違います。
②圧迫療法
 適度に患肢を圧迫することで貯留したリンパ液の排出を促します。弾性包帯や弾性着衣を用います。適度な圧迫の上でさらに適度な運動を行うことでよりリンパの流れを高めることができ良いとされています。
③手術
 リンパ管細静脈吻合術というのがあります。当院では局所麻酔で行っています。リンパ管は約0.5mmと細いものです。それに対して血管は比較的径が大きく、容量としては余裕があります。リンパ管はリンパ節を経て中枢で静脈に繋がります。細いリンパ管と血管とを末梢部位で繋ぐことで、リンパ液の流れを早めに血管に流すことで渋滞しやすい郭清部位から迂回させ、浮腫の改善を図るというものです。

 浮腫の状態、程度は人によってさまざまであり、適切な治療を組み合わせる必要があります。それと共に日々の自身でのケアが重要になります。