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骨折を回避するための一つの選択肢 総蛋白とアルブミンをしらべてみよう!

2024年11月11日

四国がんセンター 血液腫瘍内科 吉田功 先生

 血液はおおまかに赤血球、白血球、血小板と血漿にわけることができます。血液は骨の内部にある骨髄で産生されています。これらの血液が量的質的に一定の機能(役割)を果たすことで、カラダの恒常性(環境が変化しても生体が構造や生理的状態を一定に保って生命を維持すること)が保たれています。

 カラダの恒常性を保つための機能として、①赤血球が酸素を全身の細胞に運ぶ(赤血球が足りない状態を貧血と呼び、動いた時に息切れします)、②カラダに侵入してきたウイルス・細菌等の病原微生物を白血球が排除(感染に対する免疫)、③発生初期の段階でがん細胞を白血球が排除(がんに対する免疫)、④血小板や血漿が出血を止める(止血)ことが挙げられます。血液はカラダにとって不可欠なものであり、骨髄は血液を産生する臓器とも言えます。

 皆さんは、血液のがんの中で骨折を起こすことのあるがんをご存知でしょうか。多発性骨髄腫という病気で、抗体を産生する形質細胞から発生します。病気がすすんだ場合の特徴的な症状は、CRABという言葉で表現されます。Cは高カルシウム血症、Rは腎機能障害、Aは貧血、Bは骨折であり、いずれも英語の頭文字になります。ストーリーとしては、骨の中にある骨髄で骨髄腫が増悪すると貧血が進行し、骨の中の破骨細胞が活発になり骨が溶けることで骨折がおこり、高カルシウム血症もおこり、(後述するM蛋白が腎臓の尿細管を閉塞させることにより)腎機能障害が出現するということになります。ただこのがんは、骨髄中で形質細胞が増えてもCRABなどの症状なく経過をする場合もあります。

 では、この病気はCRABなどの症状がないと見つけることができないのかと言いますと、実は採血検査で見つけられることがあります。血液中のタンパク質を総称して、総蛋白と呼びます。総蛋白の中には抗体と呼ばれる免疫グロブリンも含まれています。抗体を産生する形質細胞から発生した骨髄腫は、がん細胞そのものが自己複製(クローン化)するだけでなく、クローン化した免疫グロブリン(M蛋白;Mは単クローンの頭文字です)を産生する特徴を持っています。M蛋白は、免疫電気泳動法という検査で確認することができます。M蛋白が増えると総蛋白が増加します。一方で総蛋白の中に含まれている栄養の指標とされるアルブミンは、相対的に減少します。総蛋白が増加しアルブミンが減少している場合には、骨髄腫の検査をおこなうことで診断につながる可能性があります。

 この10数年の間に骨髄腫に対する新しい治療薬が次々と登場したため、高齢であっても長期に元気で過ごすことができるようになりました。ただ、CRABのような症状がでる前に骨髄腫であることがわかる方が、つらい思いをすることを減らすことができるのも事実です。かかりつけ医の先生と相談して、他の病気で採血をするときに総蛋白とアルブミンを検査してみるのも良いかもしれません。