ACP(アドバンス・ケア・プランニング)って、なに?
おおしろ外科 こもれび診療所 大城良雄 先生
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という言葉をご存じですか? 人生会議ともいわれます。自分が病気になったら、介護が必要になったら、「これまで大切にしたことは何か、これから誰とどこでどのように過ごしたいか、どのような介護や医療を希望するか」などを考えることになります。家族や大切な人、時には医療・介護関係者とともに、その人の生き方の話し合いをするプロセスがACPです。
どれだけ医療が進歩しても、私たちは様々な形で終末期といわれる時を過ごします。がんと向き合っている時、「これ以上治療方法はない」と担当の先生に言われると、痛みや苦しみをとる緩和ケアへ移行します。自宅?入院(緩和ケア病棟)?施設? どこで、誰と、どのように過ごすのでしょう。
心不全や呼吸不全、肝不全や腎不全でも治療が難しくなる時期がやってきます。認知症が進んで家族のこともわからないとか、意志決定ができないこともあります。明らかな疾患がないのに加齢のため動けない・飲み込めない・食べられない(老衰)など様々な状況に直面します。
病気がゆっくり進行する場合、予測したり考えたり相談したりすることは比較的容易ですが、急変して病院に救急搬送されることを思い浮かべてください。病状説明をうけて急な選択を迫られた時には戸惑うこともあるかもしれません。人生100年という言葉とは裏腹に、元気で自分の思うように動くことは徐々に難しくなります。口から食べられなくなったら、鼻や胃からチューブを使って栄養を入れる、心臓の近くにカテーテルをいれて中心静脈栄養をする、手足から点滴をする、あるいは何もしない。医師は説明をしますが、決定するのは本人・家族です。患者本人が意志決定できない場合は家族に決定が求められます。家族がその人の想いを聞いていたら決断しやすいこともあるのです。
厚生労働省は終末期医療という概念を「人生最終段階における医療とケア」という言葉に置き換えました。その人の生き方を尊重した医療やケアが提供されるべきであると変わりつつあるのです。その根幹を支えるのがACPです。
ACPは以下を一つのサイクルとしてします。
①自分はどんなことを大切にしているか、どんな医療を受けたいかなどを考えてみる
②そのことを信頼できる人に話してみる
③考えたことや話し合ったことを書き留めておく
この3つの作業を一つのステップとして、機会あるごとに深めていくこと、繰り返してみることが必要です。身近な家族やかかりつけの医師と話題にしてみることから始めてみましょう。