原発性手掌多汗症(いわゆる手汗)について
原発性手掌多汗症(いわゆる手汗)について
福音寺皮ふ科ひ尿器科クリニック 杉浦啓介 先生
汗は人間の体温調節にとって重要な役割を果たしています。体温が上昇すると汗をかいてその汗を蒸発させて体温を下降させ、一定に保つようにしています。
さまざまな理由で必要以上に汗をかき日常生活に支障をきたす病気を「多汗症」といいます。明らかな原因のない多汗症を原発性多汗症、他の病気やお薬の副作用が原因となる多汗症を続発性多汗症といいます。
また、全身に汗をたくさんかくものを全身性多汗症、一部の特定の部位に左右対称性に汗をたくさんかくものを局所多汗症といいます。局所多汗症のうち手のひらに多く汗をかくものを原発性手掌多汗症(いわゆる手汗)といいます。
主な症状は緊張した時や物を持つ時などに両方の手のひらに大量の汗を認めます。紙が汗でにじんでしまう、握手をするときに汗でちゅうちょしてしまう、スマホやパソコンの操作が汗でしにくくなる、汗のせいで道具を使うスポーツが制限されてしまう、などがあります。多くは10代頃に症状が出現し、2013年の報告では日本人の約20人に1人は原発性手掌多汗症とされています。
原発性手掌多汗症には診断基準があります。6カ月以上、手汗を多量に認めることに加え、次の6項目のうち2項目以上当てはまるものがあれば原発性手掌多汗症と診断します。
①最初に多汗の症状がでたのが25歳以下
②発汗は左右対称にみられる
③睡眠中は発汗が止まっている
④1週間に1回以上は多汗の症状がでる
⑤家族に同じ症状の人がいる
⑥手汗のために日常生活に支障をきたしている
また、重症度の判定は4段階で
①発汗はまったく気にならず日常生活に支障がない
②発汗は我慢できるが日常生活に時々支障がある
③発汗はほとんど我慢できず、日常生活にひんぱんに支障がある
④発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
これらのうち③、④は重症とされています。治療に関してですが、以前からのみ薬による治療や交感神経遮断術という手術による治療が保険適応としてありましたが、塗り薬(抗コリン外用剤)による治療が保険適応に追加されました。就寝前に手のひらに直接くすりを塗り広げます。くすりは皮膚から吸収され発汗を促す物質を抑えて過剰な発汗を抑えます。くすりが眼に入らないよう翌朝流水で洗い流してもらいます。ただし塗り薬ですが副作用が出現することもありますし、持病によっては使用できない方もいらっしゃいます。
手汗で悩んでいる方がいらっしゃいましたら一度、皮膚科を受診してみてはいかがでしょうか。