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うつ病とその予防について

2025年5月1日

うつ病とその予防について

あかつきメンタルヘルスクリニック 辻暁哉 先生

私たちの暮らしの中には、大小様々なストレスが存在しています。ストレスを受け続けることで、心はエネルギーを消耗していき、色々な病気になってしまいます。その代表的なものとして「うつ病」があります。
 生涯でうつ病を経験する人は10人から15人に1人程度と言われており、決して珍しい病気でありません。
■症状は
・気分が沈む
・何に対しても興味がなく、喜びを感じない
・食欲が低下し、体重減少が著しい(時には食欲が増加します)
・夜が眠れない(寝付けない、目が何回も覚める、眠りが浅く夢ばかり見る、朝早くに目が覚める)
・不安でソワソワして落ち着かない
・話し方や動作が鈍くなる
・やる気が出ない、疲れやすい
・自分に価値がないと感じる/自分を責めてしまう
・考えがまとまらず集中力が低下して、決断ができない
・死ぬことを考え、その計画を立てる
といったものです。これらの症状の5つ以上が毎日、2週間以上続いたときにうつ病と診断されます。
 うつ病は、特に初期の段階で体の症状のみ目立つことがあります。動悸、めまい、お腹の痛み、手足の痺れなどの症状が強く出現して病院で検査をしても、結果は問題なく原因が分からないという場合も少なくありません。
 うつ病となる原因は、はっきりとは分かっていません。遺伝、性格、育ってきた環境、生活上のストレスなど、様々な要因が重なり、脳の中でセロトニンやノルアドレナリンといったホルモンが減少することで発症すると考えられています。大切なことは「うつ病」は、心の問題でなく脳の病気ということです。脳の病気であるため、しっかりとした治療が必要となってきます。そして治療をすれば改善することが可能な病気です。
 うつ病の治療では、脳内のホルモンを整える「抗うつ薬」というお薬を使いますが、種類はたくさんあり、効果や副作用の出方は人によって変わってきます。自分に合った薬を主治医の先生としっかり相談していくことが大切です。しかし、薬の調整だけでは難しく、もう一つ大切な治療は休養です。ずっと頑張り続けて心のエネルギーを消耗しきっているため、体だけでなく心も休養してエネルギーを充電していくことが必要です。頑張ってきた自分を認めてあげて、休むことを悪いと思わず、自分自身のためにゆっくりと過ごして欲しいと思います。
 ストレスはどこにでも存在しています。楽しいこと、充実することなどプラスと感じているものでさえも、裏には隠れています。ストレス環境が続くと、いつの間にか慣れてしまいストレスを認識できなくなります。しかし、確実に心は疲弊していき、更に一人で抱えているとしんどさは何倍にもなります。辛い気持ちを言葉で吐き出し、相談し、誰かに寄り添ってもらうだけでも気持ちは楽になります。その中で少しずつストレスが整理されていきます。そのお手伝いをしていくことも精神科医師としての大切な役割だと思っています。