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マダニ症とは

2025年11月13日

こいずみ形成外科皮ふ科 古泉佳男 先生

 マダニ症とは、野外に生息するマダニに咬まれることで生じる皮膚症状や感染症のことです。マダニは山林や草地、畑、河川敷などに生息し、動物や人間に一時的に寄生して吸血します。特に3月から11月頃の春から秋にかけてマダニの活動が活発になり、マダニ症の発生もこの季節に集中します。この時期の農作業や山林作業、屋外レクリエーションではマダニ咬傷に注意が必要です。
 マダニ症は日本全国で毎年数千件の報告があり、その中には重篤な感染症を引き起こす事例も含まれます。特に西日本を中心に、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の症例が報告されており、生命に対する危険性が高いため社会的な関心が高まっています。愛媛県でも昨年6例の届出がありました。
 ほかにも日本紅斑熱やライム病もマダニを介して感染する可能性があり、いずれも発熱、頭痛、発疹などの全身症状が現れます。
 屋外活動後に付着しているマダニを見つけた場合、無理に引き抜かず、速やかに医療機関を受診して除去してもらうようにしましょう。自分で取り除くとマダニの口が皮膚に残って化膿したり、SFTSや日本紅斑熱に感染する危険性が高くなります。残った口はできものの原因になることもあります。
 マダニに刺されてから2週間までに高熱や皮疹が出現した場合には病院を受診しましょう。日本紅斑熱やライム病は、抗生物質が有効です。SFTSはウイルス性疾患で特効薬がないため、対症療法が中心となります。
 マダニ咬傷の予防には、野外活動時に肌の露出を避けることが最も有効です。長袖・長ズボン・帽子を着用し、シャツの裾はズボンに入れ、ズボンの裾は靴下の中に入れるなど、体を覆うようにしましょう。マダニが付着しにくい、滑りのよいナイロンの上着がおすすめです。また、ディートやイカリジンを含む虫よけスプレーを使用することもよいでしょう。帰宅後は浴室ですぐに着替え、全身を確認してマダニが付いていないかチェックする習慣をつけるとよいでしょう。
 ペット、特に犬や猫がマダニに咬まれたり、家庭内に持ち込むことも多く、人間への感染源となる場合があります。散歩後の体のチェックや、スポットタイプや飲み薬のマダニ駆除薬の使用が効果的です。特にSFTSウイルスは犬や猫が感染していても症状を示さず、飼い主や獣医師に二次的に感染させることもあるため、ペットの健康管理も重要です。動物を屋内に入れる前には全身の確認を行い、マダニを見つけたら獣医師に相談しましょう。
 マダニ症は身近にリスクが潜んでいますが、正しい知識と対策によって十分に予防可能です。季節や環境を意識しながら、自己防衛とペットのケアを心がけることが、マダニからの重篤な感染症を防ぐ鍵となります。