病気について知る病気の解説

医療画像検査での放射線科専門医の果たす役割

2025年12月1日

医療画像検査での放射線科専門医の果たす役割

道後画像クリニック 山下希江 先生

 病院やクリニックでCTやMRIなどの検査を受ける機会が増えてきています。放射線科医は、こうした医療画像を詳細に確認し、病気の有無を見きわめる役割を持ちます。がんや内臓の異常、けがなどを早く発見するために、放射線科医の目はとても重要です。

 高齢化の進行、医療の高度化、がん検診や精密検査の需要増加、さらには医療機器の普及により、CTやMRIの検査数は近年大きく増加していますが、一方で放射線科医の数は十分に追いついておらず、特に地方では深刻な状況となっています。放射線科医が常駐している医療機関は全体の20%以下とされ、大半のCTやMRI検査が放射線科医の監督下にないまま実施されています。全国的に見ても、放射線科医が診断に関与している検査は全体の半数程度にとどまっています。

 では、放射線科医が関与することで、どのような利点があるのでしょうか。まず一つ目は、検査の選び方における的確さです。
放射線科医は画像診断の専門家として、症状や目的に応じた適切な検査の選定をサポートします。これにより、より正確な診断につながりやすく、必要以上の検査を避けることで、被ばくや造影剤による副作用のリスクを抑えることにもつながります。

 二つ目は、画像全体にわたる丁寧な観察です。放射線科医は全身を広く公平に見渡す視点を持っており、思いがけず写り込んだ病変や見逃されやすい病変などにも気づきやすいという特徴があります。専門性に基づいた観察が、診断の精度をさらに高める助けとなるのです。

 放射線科医の診断は、他の診療科の医師が治療方針を正確に立てるための重要な土台となります。患者さんにとっても、安心・安全な医療を受けるためには、まず正しい診断がなされることが何より大切です。画像診断の専門家が関わることで、診断の正確さが高まり、より納得のいく診療や安心につながります。