病気について知る病気の解説

ー 失明にもつながる病気 ー  糖尿病網膜症について

2021年4月2日

合併症が怖い糖尿病
 近年、患者数の増加が著しい病気の代表に、糖尿病があります。国内の患者数は約1000万人、予備群を含めると、約2000万人になります。糖尿病は合併症が怖い病気であり、主な合併症は腎症や神経障害、そして網膜症で、これらは三大合併症といわれています。程度の差はありますが、糖尿病の患者さんの約3分の1に、網膜症が起きているといわれています。

眼に起こる合併症「糖尿病網膜症」
 糖尿病網膜症は、網膜が障害を受ける病気です。網膜は眼球の内壁のほとんどを覆う薄い膜であり、カメラに例えるとフィルムにあたる場所です。フィルムが悪い状態で写真を撮るときれいに撮れないように、網膜症が進行すると視力が低下していきます。
 糖尿病網膜症は、進行の程度により「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の3つに分けられています。単純網膜症や増殖前網膜症の段階では自覚症状はほとんどないため、気づかないうちに病気が進行することがあります。
 さらに病気が進行し重症になると、増殖糖尿病網膜症となり、網膜に線維血管膜と呼ばれる異常な膜が増殖していきます。増殖した線維血管膜は目の中に大出血を起こしたり、難治性の網膜剥離を引きおこしたりするため、ある日突然見えなくなることがあります。手術で視力の回復を得られる方もたくさんいらっしゃいますが、病気の進行具合によってはそのまま視力障害が残ることがあります。

自覚症状がなくても定期受診が大事
 現在日本での視力障害の原因の第3位が糖尿病網膜症であり、失明にもつながる怖い病気ですが、発見が早ければ治療も早く開始することができます。そのため、自覚症状のない早期のうちから定期的な眼底検査を受けることが非常に重要です。そうすることで、進行状況に応じた適切な治療を受けることができ、良好な視力を維持することが可能になります。

眼科と内科の連携が大事
 糖尿病網膜症は糖尿病の合併症のため、大本の原因である糖尿病の治療が非常に重要です。糖尿病の治療の基本は血糖のコントロールであり、血糖を低くコントロールできれば、網膜症の進行をある程度抑制できます。ただし、急激に血糖を下げると網膜症を悪化させることもあり、内科での計画的な血糖コントロールが必要です。
 近年は糖尿病連携手帳を使用して、眼科と内科の情報交換がよりスムーズに行えるようになりました。もし、まだ使用されていないという方には、是非とも使用していただきたいと思います。