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膀胱と尿道を合わせて下部尿路

2021年5月14日

 近年泌尿器科では、膀胱尿道の機能障害から起こる症状を「下部尿路症状」と言います。これまでわが国では、膀胱・尿道の機能障害から起こる症状を「排尿症状」と総称していました。しかし「排尿」という用語は、本来「尿を出すこと」を意味するので、尿失禁など蓄尿障害を含めた総称としては、やや不適切でした。
 日本排尿機能学会による大規模調査では、本邦60歳以上の男女では、78%が何らかの下部尿路症状を感じていることが報告されています。疾患頻度が高いこともあり、国際禁制学会の用語に従う形で改められたのです。(※禁制…排泄のコントロール)
この下部尿路症状は、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状に分類されます。尿をためているとき、排尿しているとき、排尿した後、感じられる症状という分類です。具体的には、蓄尿症状は、頻尿、尿失禁など、排尿症状は、尿勢低下、排尿遅延など、排尿後症状としては、残尿感などです。
 症状の分類は、整理することによって、診察の参考になりますが、症状とその原因となる病態とは、必ずしも単純に一対一で対応しているわけではありません。例えば頻尿は、蓄尿症状ですが、高齢男性では、前立腺肥大症によって膀胱から尿の排出が障害されて残尿量が増えた結果、頻尿となることもあります。また、細菌性膀胱炎では、頻尿という蓄尿症状とともに、残尿感という排尿後症状が、両方感じられることもよくあります。
 下部尿路症状を治療につなげるためには、患者さんへのさらに詳細な問診、尿検査・残尿測定などが必要になってきます。受診の際にはご協力よろしくお願いします。