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尿意切迫感、新薬開発や治療進む

2021年5月12日

「急に異常にものすごくオシッコしたくなって、漏れそうであわててトイレに走った」という経験はありませんか。私たち専門医はこれを尿意切迫感と呼んでいます。日常生活では使われない言葉ですが、過活動膀胱という病気の特徴的な症状です。
 正常な膀胱は風船のように伸び縮みする袋に例えられます。普段は壁の力が抜けていてオシッコがたまった分だけ壁が伸びます。トイレに行き、脳からオシッコを出そうという命令が来ると壁に力が入って膀胱が縮み、オシッコをしぼり出します。ところが過活動膀胱はトイレでない所で膀胱が勝手に縮みだしてしまい、これが尿意切迫感を起こしていると考えられます。1週間に1回以上、尿意切迫感を感じる人は過活動膀胱の可能性があります。原因不明で起こるケースと前立腺肥大症(男性の場合)や神経の病気など他の病気が原因で過活動になるケースがあります。
 診断にはまず代表的な症状の頻度を問うOABSS(過活動膀胱症状スコア)と呼ばれる問診を行います。そして膀胱炎などに関して検尿を行います。膀胱そのものの病気、例えば膀胱がんや膀胱結石、それから前立腺肥大症など、原因となる病気などを見つけるために超音波検査を行うこともあります。また、膀胱が尿をしぼり切れているか、それとも膀胱に残っている尿があるのかも超音波などで調べます。
 治療は膀胱が間違って縮むのを止める薬や、ゆっくり伸びるのを助ける薬などを病気の程度や体質に合わせて使うことが多いですが、原因となる病気が見つかった人は、まずその病気を治します。尿意切迫感を週に1回以上感じている人は、かかりつけの医師に相談してみてください。もちろん、直接泌尿器科を受診することもできます。研究が進み、新しい薬や治療も開発されていますので、以前うまく治らなかった人も、もう一度相談してみてはいかがでしょうか。(毎日新聞5月12日付)