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大人の発達障害について

2022年6月17日

 発達障害は、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、学習障害などがあり、生まれつきの脳の発達にかたよりがある障害です。他人との関係づくりやコミュニケーションが苦手で、得意・不得意の差も大きく、暮らしのなかで生きづらさが生じます。発達障害は外見からは分かりにくいこともあり、その症状や困りごとは人それぞれです。多くの人は発達障害と言えば子どもの障害といったイメージかと思います。しかし、大人になり発達障害の特性が明らかになることもあります。
 発達障害の診断を受けた場合、診断の時期の多くは子どもの頃ですが、軽症の場合などは対人関係やコミュニケーションに苦労しながらもなんとか環境に適応し、障害に気づかれなかったり見逃されたりすることがあります。しかし、大人になると、対人関係やコミュニケーションは複雑かつ高度になり自由度も増します。そうなると、「他の人とは違う気がする」などの違和感や生きづらさを感じるようになり、それまでは大きな問題にならなかった障害が明らかになることがあります。また、失敗を繰り返したり、周囲から責められながら生活し、その中で自信を失ってしまい、うつ病などの二次的な病気になることも多く、それがきっかけで診断されることもあります。
 発達障害の治療は「治す」というよりも「生きづらさを減らす」ことが目標となります。まずは、心理検査やカウンセリングを行い、自分の得意なことや苦手なことなどを理解していきます。同時に周囲の方にも、生きづらさを少しでも理解してもらいサポートをお願いします。そして苦手なことに対しては、生活の中での対処法を身につけていきます。忘れっぽいならこまめにメモをとる、聞いて理解することが苦手であれば絵や図を用いた説明をしてもらう、複数のことを同時に処理することが苦手な人は一つのことだけをする時間を作る、などです。得意なことがあれば、それを生かせる仕事や居場所を一緒に探すこともあります。また、障害手帳などを申請して仕事などの支援を受けることが可能な場合もあります。
 これらでも効果が不十分であれば、お薬の治療も考えていきます。注意欠如多動症の多動・不注意症状や、自閉スペクトラム症の興奮しやすさ・イライラなどに対しては治療薬があり、特性を和らげるために処方することがあります。
 また二次的な障害により、気分の落ち込みや幻覚妄想が出現している場合は、それらの症状に対しての治療薬も処方していきます。
 このような治療の中で、安心できる居場所をみつけて、できることを増やして自己肯定感を高めていく事を目標にしていきます。「同じミスをくりかえす」「周囲から誤解をうけやすい」など何らかの生きづらさを感じる場合は、それが全て発達障害だというわけではありませんが、一度心療内科や精神科を受診し相談してみると何か手がかりがつかめることがあるかもしれません。