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酒とコウソとノドとクチ

2022年7月1日

 みなさんは「頭頸部」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。頭頸部とは、顔面から頸部までの部分のことで、口やのどなどが含まれます。この部位にできるがんを「頭頸部がん」といいます。
 頭頸部がんの一部である口腔・咽頭がん、喉頭がんは、飲酒と因果関係があります。飲酒によってどの程度リスクが上がるかというと、まったく飲酒しない人を1とした場合、大量飲酒者の喉頭がん発生リスクは2・65倍。口腔・咽頭がんに至っては、発生リスクがなんと5・13倍という報告がされています。
 なぜ飲酒ががんの原因になるかというと、アルコールは体内に入ると「アセトアルデヒド」という物質に代謝されます。この物質は顔面や体の紅潮、頭痛、吐き気、頻脈などの不快な症状を引き起こすだけでなく、発がん性があると考えられています。このアセトアルデヒドを分解するのが「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)」です。ところが、日本人は約40%の人がこのALDH2の活性が弱い「低活性型」のため、日本人はお酒に弱い体質といわれています。さらに約4%の人は「不活性型」と呼ばれ、ALDH2の働きが全くなく、お酒を全く飲めない体質なのです。ALDH2の働きが弱いと、発がん物質であるアセトアルデヒドがなかなか分解されず、口やのどに長時間とどまり、発がんのリスクが高まるわけです。
 お酒とは、自分の体質も知った上で付き合っていく必要があるのです。長年、飲酒の習慣があり、のどに違和感があるようなら、お近くの耳鼻咽喉科専門医に相談してみましょう。