病気について知る病気の解説

いびきと睡眠時無呼吸症候群について

2022年10月7日

 いびきをかいている場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気である可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は主に、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。また、この病気特有の「眠気」は交通事故を起こす危険もあり、お仕事で運転をされる方は特に社会的にも早期に適切な治療をすることが重要です。

 睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道が狭くなることによって起こります。狭くなる原因は鼻づまりや、口の中の扁桃が大きいこと、首の脂肪が多いことなどがあります。
 欧米の患者さんは肥満の方がほとんどですが、日本の患者さんはあごが小さいため、気道がふさがれやすく、やせているのにこの病気を発症している方も多いです。そのため睡眠時無呼吸症候群の患者さん全員が太っていると思うのは大きな間違いです。

 この病気で影響が出ることは大きく分けて2つあり、1つ目は、いつのまにか日中に寝てしまうことによる、交通事故や労働災害であり、患者さん自身とその周囲の人に影響が及んでしまいます。2つ目は、生活習慣病の発症や急激に心臓機能の悪化を引き起こし、患者さん自身の寿命を短くしてしまう可能性がある、ということです。
 2003年に起こった山陽新幹線の運転士居眠り事件に代表されるように睡眠時無呼吸症候群は大きな労働災害を引き起こす原因になっています。また、重症の患者さんは健常者と比べて、交通事故発生率が約3倍になるというデータもあります。
 近年では、高血圧や心臓病、糖尿病など生活習慣病との因果関係がいろいろな研究から分かってきました。働き盛りの30~60歳代の世代が「ある日突然亡くなってしまう」という危険性をこの病気は、常にはらんでいます。

 睡眠時無呼吸症候群はこのように怖い病気ですが、きちんと検査を行って必要な治療をすれば、眠気や酸素不足による心臓や脳、血管への負担を改善でき、快適な生活を送ることができます。世界的に確立している治療方法としてCPAP療法があります。
 この方法は、専用のマスクを通じて空気の通り道に空気を送り込み、空気の通り道を広げてあげて呼吸停止を防ぐ治療です。高血圧などの合併症の予防や改善に効果があると立証されており、日本でも医師の診察と検査の結果で適応を満たせば健康保険が適用されます。
 CPAP療法を毎日一定時間行うことで、重症の患者さんでも、日中の眠気が激減するだけでなく、合併症や交通事故による死亡率が低下することが報告されています。鼻の通りが悪い場合は、耳鼻科的な治療で鼻の通りを良くすることで、CPAPで治療を行う場合でも装置装着の不快感が軽減され、治療効果が高まります。
 睡眠時にいびきをかく方は、一度医療機関に相談されることをお勧めします。