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「神経痛」について

2022年10月28日

 「神経痛」というと、年配の方の病気のように思われがちですが、「神経痛」というのは、症状を表す言葉であって、病名ではありません。例えば、坐骨神経痛の原因には、神経が圧迫されて傷んでくる場合もありますし、帯状疱疹のように、神経自体に起こる病気もあります。それぞれ原因によって治し方が違ってきますので、原因を調べ、それに応じた治療をすることが大切です。

 神経が押されて坐骨神経痛を起こす原因として代表的なのは、腰椎椎間板ヘルニアです。腰の背骨と背骨の間に挟まっている椎間板というクッションの一部が飛び出して、神経の出口や通り道を邪魔して神経痛が起こります。それ以外に、腰の背骨がズレてくる腰椎辷り症もあります。また、背骨の後ろの方にある椎間関節が太くなったり、そのそばを走る黄色靱帯が分厚くなったりして、神経の通り道が狭くなる腰部脊柱管狭窄症でも、神経が刺激されて坐骨神経痛が出ます。このように原因によって症状の出方が違います。お話を聞いただけでも診断が推察できますが、MRIなどで詳しく調べて、最終的に診断します。おのずと治し方も違ってきます。
 痛みや温度などの感覚を伝える知覚神経は比較的細く、ちょっとした刺激でも症状が出やすいのですが、筋肉に命令を送る運動神経は太く、少々の刺激では筋力低下や麻痺はすぐには起こりません。力が入りにくくなっているときは、より重症と考えられます。

 さて、神経というと電線のようなイメージを持つかもしれませんが、神経は生きた細胞の一部です。神経細胞の突起が神経線維となっているので、神経線維が回復できないくらいに傷んでしまうと、その細胞はうまく感覚や命令を伝えられなくなり、後遺症という形で残ってしまいます。
 手術をしても良くならない、というお話を聞くことがありますが、上記のように神経細胞が傷んでしまっている場合は回復しません。つまり、神経は、回復する段階のうちに治す必要があります。“特定の動作で痛みが走る”“長く立っていると痛みが強くなる”といった症状がある場合に、我慢して無理をしていると、細胞が回復できなくなる可能性があります。痛みは、神経が発している危険信号と考えてください。急性期には適度の安静(神経への刺激を減らすこと)が大切です。ただし、長く休めすぎるといろいろな弊害も起こりますので、医師と相談しながら対応してください。

 安静やコルセット・装具などで、神経が回復するために必要な環境を整えて、お薬や注射で神経の回復を助けてあげましょう。1週間程度の急性期を過ぎたら、できるだけ早くリハビリ等を行い、筋肉が弱ったり縮んだりしないようにして、一日でも早い復帰を目指しましょう。