病気について知る病気の解説

物が二重に見えるんですけど…

2022年11月11日

 1つの物が2つに見えることを複視といいます。片眼で見たときに起こるのか、両眼で見たときに起こるのか、急に起こったのかどうか、状態によって考えられる病気は異なります。

 まず、手で片方の眼を隠してみて下さい。片眼で二重に見える状態を「単眼複視」といい、開いている方の眼の異常が考えられます。この場合、原因として近視、遠視、乱視などの屈折異常や白内障などの眼の病気の可能性がありますので眼科を受診して下さい。眼鏡矯正や眼の病気の治療によって改善が期待できるかもしれません。

 片眼ずつで見るとちゃんと見えるのに、両眼で見ると二重になるものを「両眼複視」といいます。この場合、原因として眼の病気のこともありますが、背後に頭や全身の重篤な病気が潜んでいることがあります。見え方の異常なので最初に眼科を受診されることも多いのですが、脳神経外科や内科など、他科との連携をとりながら診療を進めていくことになります。

 両眼複視は、左右両眼の視線が目標に向かってそろわない、斜視の状態になっていることでおこります。眼そのものよりも眼を動かしている筋肉の異常、もしくはその筋肉に指令を出す脳神経の異常が考えられます。
 眼の動きに関わる脳神経は動眼神経、滑車神経、外転神経の3種類です。動眼神経は多方向への眼球運動に関与しており、麻痺を生じると、上、下、内側を向くことができなくなります。まぶたの動きや瞳孔の大きさの調節にも関わっていますので、まぶたが下がったり瞳が開いたままになったりすることもあります。外転神経が麻痺すると、眼が外に向かなくなります。滑車神経が麻痺すると、下向きができにくくなります。

 突然両眼複視がおこった場合、最も注意すべきは頭の病気です。脳梗塞などの脳血管障害や脳腫瘍、外傷など、脳神経の通り道に異常がないかCTやMRI検査を行います。特に動眼神経麻痺で瞳も開いている場合には、脳動脈瘤が破裂してクモ膜下出血をおこす前の危険信号の疑いがあり緊急を要します。
 頭に異常がなければ全身の病気がないかどうかを調べます。重症筋無力症、甲状腺疾患、糖尿病、高血圧などが考えられるため、血液検査を含めた内科的な診療をお勧めします。案外、糖尿病を抱えている頻度が多いような印象があります。

 原因が分かれば、その病気を治療します。結局、原因不明のまま循環改善薬やビタミン剤の内服などで経過をみているうちに自然に軽快することもしばしばです。複視の訴えが強い場合は麻痺眼を遮蔽したりプリズムという特殊な眼鏡を処方したりすることもあります。症状が固定してしまった場合には手術を検討することもあります。症状が少しでも軽減すれば過ごしやすくなると思います。

 複視の症状や程度は様々ですが、命に関わるようなサインであることもあります。ストレスや眼の疲れかな~と放置することなく、原因を確かめ適切な治療を受けましょう。