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サル痘について

2023年1月20日

 本邦では新型コロナウイルス感染の第8波の真っただ中にありますが、欧米では新たなウイルス感染症「サル痘」の流行が問題となっております。日本でも2022年7月25日に初めての感染例が報告され、今後の感染拡大が心配されます。
 サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症で、中央アフリカから西アフリカにかけて流行しており、風土病的な疾患として認識されていました。しかし、2022年5月頃からヨーロッパ・アメリカを中心に拡大し、WHOで緊急対応を要するウイルスとして取り上げられました。

 サル痘の感染経路は「動物から人への感染」と「人から人への感染」に分けられますが、特に日本で気を付けなければならないのは「人から人への感染」です。「人から人への感染」の場合、だ液や痰などの呼吸器分泌物・感染者の皮膚病変や汚染された物体への密接な接触(性的接触を含む)で起こる場合があります。

 サル痘の潜伏期間は通常1~2週間です。潜伏期間のあとに発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛といった全身症状が出現します。そして発熱から1~3日以内に95%の方に発疹を生じます。発疹は、顔面や四肢(特に手のひら・足の裏)に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱となり時間が経つとかさぶたになって脱落します。発熱と皮膚の水疱を生じることから水ぼうそうによく似ていますが、サル痘では手掌(手のひら)や足底にも皮疹が出現することなどが、水ぼうそうと違う点とされています。多くの場合2~4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがあります。WHOによるとサル痘の最近の致死率は3~6%と報告しています。

 治療は、多くの場合対症療法です。口の中やのどの痛みが強く、食事がとれないことがあるので、栄養状態を維持しながら、二次的に起こる細菌感染症を抑え、痛みに対して鎮痛薬を投与するなどして経過観察します。海外では天然痘用に開発された抗ウイルス剤が投与されるケースがありますが、現在日本では薬事承認された治療薬はありません。
予防に関しては、天然痘ワクチン接種により約85%発症予防効果があるとされています。

 サル痘は感染症法で「4類」に該当する感染症であり、医療機関も保健所に届け出が必要です。「サル痘かな?」と思ったら、感染拡大防止や早期治療のためにも早めに医療機関に受診するようにしましょう。