病気について知る病気の解説

骨卒中と骨折リエゾンサービス

2023年3月10日

 体の中では1日に約1gずつ新しい骨に入れ替わっており、約3年から5年で全身の骨が新しくなります。骨の組織では「破骨細胞」が古い骨のカルシウムやコラーゲンを溶かした後に、「骨芽細胞」がコラーゲンを作り、血液中のカルシウムが付着して新しい骨ができあがります。破骨細胞が溶かしたカルシウムは体内で重要な働きがあり、増えすぎても減りすぎても健康に障害を生じます。閉経や加齢の影響で骨の吸収と形成のバランスが崩れて骨が弱くなり、骨折の危険性が高まったものが「骨粗しょう症」です。

 転じて最近「骨卒中」という言葉が聞かれます。卒中とは急に倒れて場合によっては死に至る状態を意味するものですが、骨卒中は骨の血管が詰まったり破れたりするものではありません。主に高齢者では骨折自体が命を奪うものではありませんが、全身の機能低下をベースに骨折が引き金となり、骨折は治ってもその他の機能が改善せず歩行不能になったり認知症が進行したりで、健康寿命が損なわれ死亡リスクが増大します。
 また、65歳以上の高齢者が足の付け根を骨折すると5年後の生存率が63%になるというデータがあり、がんにおける全部位の5年生存率68.9%より悪いということになります。さらに5人に1人が1年以内に死亡することが分かり、極めて生命予後が悪いため「骨卒中」と呼び警鐘を鳴らしています。その最大の原因は骨粗しょう症であり、酷くなると軽微な外傷または日常生活動作の繰り返しによって骨折を生じる「脆弱性骨折」が起こることもあります。
 ひとたび脆弱性骨折を起こすとふたたび骨折を起こすリスクが高まりますが、残念ながら足のつけ根を骨折した方の約80%は1年後に骨粗しょう症の薬物療法を続けていなかったとの報告があります。たとえば、整形外科の外来では骨粗しょう症の検査と治療を継続することができますが、介護が必要となって外来に来られない方や施設入所した方々の治療継続は困難です。高齢者が骨折を繰り返し要介護状態になってしまうことは本人、家族、地域社会にとって大きな負担となります。

 近年、二次性骨折予防に関する報告を踏まえて「骨折リエゾンサービス(FLS)」の提供により骨折の連鎖を絶つスキームが提唱されています。リエゾンとは「連絡係、連絡窓口、つなぎ」などを意味するフランス語です。FLSは少し面倒なガイドラインがありますが、要は患者、家族、患者に関わる多職種で骨粗しょう症に対する知識を共有し適切な治療の継続およびリハビリテーションを実践することです。
 また、骨折のきっかけは転倒によるものが圧倒的に多いため、手すりの設置・バリアフリー化など生活環境の整備をすることも重要です。さらには行政機関への啓発と行政から市民へのアプローチも望まれます。骨粗しょう症をたかが骨の老化と考えず、命にかかわる疾患であることを肝に銘じて健康寿命の延伸に努めましょう。