病気について知る病気の解説

白血病治療の今 入院せずに外来で治療する時代に

2023年6月9日

白血病という病気をお聞きになったことがあるでしょうか。この病気になる人は少ないので、身近な方よりも、芸能人やアスリートなどの有名人が発病して初めて知る方も多いのではないかと思います。

 白血病は、いわゆる血液のがんであり、“不治の病”というイメージをお持ちの方もおられるかもしれません。しかしながら、最近では診断方法や治療方法が進歩して随分昔とは変わってきています。毎年、どれくらいの患者さんがいるのかについては、2019年の全国がん登録罹患データによると、99万9075人のがん患者さんのうち、1.4%の1万4318人が白血病を発症していて、年齢が高くなるほど増え、全体の半数以上の患者さんが70歳以上になっています。愛媛県のがん登録によると、愛媛県内では、毎年約180人程度が白血病と診断されています。

  白血病には、「急性骨髄性白血病」「急性リンパ性白血病」「慢性骨髄性白血病」「慢性リンパ性白血病」「成人T細胞性白血病」の5種類があります。その中で一番多いのが、「急性骨髄性白血病」になります。

 急性骨髄性白血病の標準的な治療は抗がん剤です。入退院を繰り返しながら、数カ月に及ぶことが普通です。

 治療を受ける環境については、近年、大きく変わりました。現在の治療環境は、昔のように閉鎖された環境ではなく、病棟全体が防護環境となり、開放的になっています。

 また、治療中に運動療法を取り入れることで、患者さんが積極的に歩いて有酸素運動をしたり、筋力トレーニングを行ったりして、治療中でも体力や筋力を落とさずに、治療を終了した後にすぐに社会復帰することが可能となっています。運動療法はその他にも倦怠感の軽減や治療意欲につながることも証明されています。しかしながら、高齢の患者さんにおいては、運動療法をしていても、入院治療中に体力や筋力が落ちてしまい、長期間の入院をせざるを得ないことがしばしばありました。

  最近、強い治療が出来ない急性骨髄性白血病の虚弱な高齢患者さんに対して、ベネトクラクスという飲み薬とアザシチジンという注射で行う新しい治療法が開発されました。この治療法の場合、最初は入院で投与が行われますが、それ以降は外来で通院しながら治療を受けることができるようになっています。急性骨髄性白血病の治療で、自宅で家族と過ごしながら、治療を受けられることは画期的なことです。

  このように、白血病の治療や治療をとりまく環境、支持療法は日々進歩しており、生存率もあがっています。白血病と診断された患者さんには、希望を持って、安心して治療に臨んでほしいと思います。