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小児の機能性(無害性)心雑音

2023年7月28日

 もし、乳幼児健診や園・小中学校の内科検診で“心雑音”を指摘されたら、「こんなに元気なのにもしかして心臓に病気があるの?」「今までかかりつけの先生にはそんなこと言われなかったのにどうして?」、そう考えてしまうかもしれません。

  まず、心雑音があること、イコール心疾患というわけではありません。確かに心雑音を生じる心疾患があり、心雑音が心疾患を発見するきっかけになる場合があります。しかし小児の場合、健康な子にも聞こえる心雑音があり、むしろそちらのほうが多いのです。かかりつけの先生は、心配のない心雑音だと思ったらわざわざ患者さんに告げません。先生だって患者さんや親御さんに余計な心配をさせたくないのです。

 機能性(無害性)心雑音とは、健康な子どもの10〜30%(注意深く聴くともっと多く)に聞こえる心雑音です。子どもの心臓は元気よく活発に動いているため、血液の流れによって雑音が生じやすいのです。

  機能性(無害性)心雑音には聴診上の特徴があります。少し専門的になりますが、以下のような心雑音を医師は聴き分けています。

1)Still雑音

musical murmur(楽音様雑音)やseagull murmur(カモメの鳴き声様雑音)とも言われる。胸骨左縁から心尖部にかけて聴取されるやや低調で収縮期前半にピークをもつ駆出性雑音。

2)肺動脈弁口雑音

肺動脈弁口領域に聴取される低調で粗い駆出性雑音。心拍出量の増大により肺動脈内に乱流が生じることによる。

3)静脈コマ音

前胸部上部に聴取されるブーンブーンというコマの回る音のような連続性雑音。頚静脈の乱流によって生じ、姿勢によって変化しやすい。

 機能性(無害性)雑音は、一般に比較的音量は小さめで収縮期の雑音です。音量の大きな雑音や拡張期の雑音は、器質的(異常な)雑音の可能性が高まります。

  心雑音を指摘されたら、まずは普段から診てくれているかかりつけの先生に相談してみましょう。「異常な雑音じゃないよ」「機能性(無害性)心雑音だよ」と言われたらまず心配ありません。あるいは、「大丈夫だと思うけど、心配なら専門医の診察を受けてみる?」と言ってくれるかもしれません。その時は専門医(小児循環器医)の診察をお勧めします。大丈夫とは言われたけれどやっぱり心配になることもあるかもしれません。そんな時も専門医の診察を受けていただいてかまいません。

 専門医では、外来で心臓超音波(エコー)検査や心電図検査を行います。検査と診察の結果、「機能性(無害性)心雑音」と診断されたら安心です。ついでにかかりつけの先生にも結果をお伝えして一緒に安心してもらいましょう。

  機能性(無害性)心雑音は、心臓が元気に動いている音といってもいいかもしれません。そしてそれは成長によっても変化します。いつのまにか指摘されなくなることもあるでしょう。「あのときは少し心配したけれど」と、そのうち大きくなったお子さんにも話してあげてください。