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内科診察室の超音波検査(エコー)

2023年10月20日

武智ひ尿器科・内科 武智知子 先生

  愛用している医療機器の超音波検査についてご紹介します。この検査は、体の中に超音波を送信して、臓器からはね返ってくる反射波を映像化します。

 右下腹部疼痛があれば虫垂炎を疑い、疼痛部位にプローブ(探触子/たんしょくし)を当てます。腸の壁は薄くて正常なら描出できませんが、炎症が起きていると浮腫で壁が厚くなったり、周囲の腹膜が炎症で高エコー(白く表示)になって異常を検知できます。生体内の軟部組織と空気との境界では超音波が100%反射されるため、ガスのある消化管や肺の裏側は描出できません。消化管は精密検査にはならないのですが、発見には威力を発揮します。診察室では、疼痛のある場所に直接プローブを当てるため、異常があるかどうかがすぐにわかるのでとても便利です。そして右下腹部疼痛で超音波検査をして、虫垂炎が憩室炎か確定診断できなくても、救急病院に橋渡しをするという役割は果たすことができます。

 超音波検査は胆嚢や膀胱はとても得意です。胆嚢の消化液(超音波では真っ黒に表示)の中にある病変は白さが際立って2mm程度でも描出可能です。胆嚢ポリープはCTでは小病変すぎて描出できないことが多いのです。胆石かポリープが紛らわしいこともあります。超音波検査では、体位変換も自由に行うことができるので、いろいろと姿勢を変えて観察したり、お腹をプローブで叩いてみたりして胆嚢内で移動したら胆石と確定できたりします。また膀胱の尿の中にある隆起性病変(癌や膀胱結石など)も良く見えます。だから腹部超音波検査の時には、来院してから排尿を我慢してもらっています。嘔気や食欲不振などで来院されたら、まずは消化管や腹部臓器を疑いますが、生理のある女性なら子宮まで見れば妊娠(妊娠5週目以降)の有無がわかります。あえて妊娠の有無を質問しなくても、つわりが除外できて便利です。

 超音波検査が苦手な分野もあります。水腎症(尿の流れがせきとめられて、腎臓の中に尿がたまって拡張した状態)を伴わない尿管結石はわかりにくいので、尿管結石が疑われる場合は、最初の検査はCT検査を選択します。ですが、尿管結石の発作では大抵水腎症を伴っているので、超音波検査で結石にせきとめられた尿を描出することも可能です。

 腹部だけでなく、心臓、乳腺、甲状腺、頸動脈、ほかにも皮膚や血管などの検査もできます。体中のいろんな部位にプローブを当てることができて何らかの情報を引き出してくることができるのです。そして最後に、超音波検査の最大のメリットは放射線被曝がないことです。繰り返しの検査をしても患者さんの体に影響がないことです。