気胸について
2023年10月20日
梶浦病院 外科 牛丸哉也 先生
肺という臓器は、胸膜(きょうまく)という薄い膜で覆われた風船のような構造をしています。この胸膜が破れて肺がしぼんでしまうのが気胸という病気で、胸の痛みや息苦しさが突然起こり発症します。肺の表面に「ブラ」という小さな袋ができ、それが何かの弾みで破れてしまうのが気胸の原因です。気胸には、このブラができる原因がハッキリしない「自然気胸」と、肺気腫や肺がんのような何らかの肺の病気によって起こってくる「続発性気胸」との2種類があります。
自然気胸は、若年で痩せた背の高い男性に起こりやすい病気です。ブラが破れても多くの場合は自然に穴がふさがるので、大半は1週間前後で治るのですが、肺がひどくしぼんでしまった場合は、漏れ出た空気を抜くための処置(ドレナージ)が必要になり、入院になることがあります。続発性気胸は、原因になる病気があるため高齢者に多く、治りにくいという特徴があります。どちらのタイプの気胸も再発しやすく、再発率は30~50%にもなります。
再発した場合や、なかなか穴がふさがらない場合は、次の段階の治療が必要になりますが、一番確実なのは手術です。現在は全身麻酔で行う胸腔鏡(きょうくうきょう)手術が主流で、自然に治るのを待つよりも短期間で治療が完了します。また、手術をすることで再発率は10分の1以下になります。
手術や麻酔の技術の進歩により、手術に伴う身体への負担は軽減してきています。もし気胸になったときでも、患者さんの手術に対するハードルが少しでも下がり、一日も早く回復して日常を過ごせることを願っています。