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大腸がんと大腸がん検診(便潜血検査)について

2023年11月10日

松山市民病院 消化器内科 田中良憲 先生

 大腸がんは我が国の「がん」による死亡数で女性の1位、男性で2位と非常に多い「がん」です。現在もますます増加しております。厚生労働省の2021年の統計でも男性で2万8080人、女性で2万4338人の方が大腸がんで亡くなっています。日本は胃がんが多いと昔から言われていましたが、現在では男女とも、胃がんよりも多くの方が大腸がんで亡くなっています。多分皆さんの周りにも大腸がんで亡くなられた方、大腸がんで治療されている方などがおられると思います。

  このような大腸がんですが、幸いなことに早期発見ができれば、治癒が期待できる「がん」です。実際早期で発見された方の5年生存率は95%と良好です。

 逆の言い方をすると大腸がんを治癒させるためには、早期発見が必要です。早期発見のため、日本では40歳以上を対象に検診での便潜血検査(2日法)が行われています。この検査では5~7%の方が要精密検査になり、要精密検査になった方が精密検査を受けると検査を受けた人の2~3%に大腸がんが見つかっています。また検診で見つかった大腸がんは早期で見つかる割合が多くなっています。

 では実際に病院に来たらどうするか。大腸内視鏡検査をお勧めしています(そのほか注腸検査や、施設によってはCT[CTコロノグラフィー]検査などもあります)。大腸内視鏡検査はおしりからカメラを挿入する検査です。このため大腸を空っぽにする必要があり、検査前に下剤を飲みます。当日朝から1〜2リットルの下剤を飲んで、昼頃から検査をします(前日から下剤をのんで午前中から検査ができる病院もあります)。基本的には予約が必要な検査となります。

 ただ検診で便潜血検査が陽性となっても精密検査の大腸内視鏡検査を受けられない方がおられます。せっかく早期で発見・治療できる可能性があるのですから、検査をしないのは「もったいない」ように思います。検査をしたくない理由は、先ほど説明した前処置の下剤が大変なことや、検査時の痛みなどとのことです。ただ最近では下剤も飲みやすくなりましたし、検査自体も鎮静剤を使って施行してくれる施設も増えております。以前よりも楽に検査できるようになってきております。

 注意点としては便秘がひどかったり、腹痛があったりしたときに大腸がん検診(便潜血検査)を受けて異常がない場合でも「大丈夫」とはいえないことです。それは大腸に進行がんがあっても「便潜血検査が必ず陽性にはならない」からです(10から20%の人は便潜血検査が陰性になります)。症状がある場合は大腸内視鏡検査などを受けることが必要です。

 ここ数年はコロナ禍もあり大腸がん検診を含めたすべての検診の受診率が低下しているとのことです。大腸がんに限らず検診を受け早期発見、早期治療をしてみてはいかがでしょうか。