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新時代の片頭痛治療

2023年12月15日

松山赤十字病院 脳神経外科 渡邊 陽祐 先生

 慢性的な頭痛に約4000万人の日本人が悩んでおり、糖尿病(1000万人)や腰痛(2800万人)より圧倒的多数です。ありふれた疾患なためか、受診せず市販の鎮痛剤で我慢し続けたり、受診しても十分な治療がされていない人が多いことが知られています。
 近年、慢性的な頭痛の原因の一つである片頭痛治療が新時代を迎えています。このたび、①予防薬と②治療薬が新登場し、我慢する時代ではなくなりました。
 ①新たな予防薬は、片頭痛の痛みに深く関与する神経伝達物質の作用を妨害し、頭痛発作が起きないようにします。これまでの予防薬は、てんかんやうつの治療薬などで片頭痛への効果があることが分かったものが流用されていましたが、副作用が多く効果は不十分でした。新たな予防薬は、片頭痛の病態
を狙って作られており、副作用が少なく頭痛の頻度を半減させる以上の効果が望めます。この予防薬のおかげで「人生が一変した」と言う人もおられます。
 ②新たな治療薬は、同様の神経伝達物質の放出を抑制したり、脳内での伝達を抑えることにより、片頭痛の痛みを改善します。これまでの治療薬は、内服のタイミングが難しかったり、鎮痛効果が十分でなかった人もいましたが、新たな治療薬はこれまで十分効果がなかった人でも有効性が明らかで、タイミングを気にせず内服することができます。
 これらの薬で頭痛から解放されましょう。特に頭痛のため1カ月に1度以上寝込んでしまったり、1カ月に3度以上日常生活に支障を感じる人は、頭痛専門医の診察をお勧めします。