病気について知る病気の解説

足のぼこぼこした血管をそのままにしていませんか?

2024年1月26日

松山まどんな病院 形成外科 土岐博之 先生

 足がむくんだり、だるさやこむら返り(足がつる)を繰り返す症状があれば下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の症状かもしれません。放置しておくと足の痒みや皮膚が変色したり、傷ができても治らない原因になります。長時間の立ち仕事やデスクワークの人、妊娠経験のある人になりやすい病気です。ゆっくり進行する疾患ですが基本的に自然に治るということはありません。

下肢静脈瘤の原因
 静脈は血液を心臓に返す役割があり、血管内に逆流防止の弁があります。この弁が壊れてしまうと血液が逆流して足に血液がたまり、静脈の壁が徐々に引き延ばされて太くなり、ぼこぼこした血管になります。また、血流の逆流により静脈の圧が上がることで炎症が起き、むくみや痒み、皮膚の変色など様々な症状を引き起こします。

下肢静脈瘤の検査
 当院ではまず下肢血管エコーを行います。痛みのない検査で静脈瘤の診断ができます。

下肢静脈瘤の治療
 当院では「できるだけ切らずに治療する」をテーマに患者さんの症状に合わせた治療に取り組んでます。
【保存的治療】
①適度な運動を行うことで下肢筋力を高めて血流をよくすることが大事です。また、塩分の取りすぎは足のむくみに繋がるため下肢静脈瘤の進行を促進させる可能性もあり、バランスの良い食事を摂取することを当院では推奨しております。
②医療用の弾性ストッキングを着用し、足首からふくらはぎまでの血流をよくるすことでむくみ対策になり下肢静脈瘤の進行予防を行います。
【手術療法】
①硬化療法
 静脈瘤に薬を注射して血管を固める治療です。固まった血管は半年くらいかけて徐々に吸収されていきます。軽症の静脈瘤には有用性の高い治療であり、外来でも治療可能です。進行した静脈瘤には効果が低く、他の外科的治療と併用することがあります。
②ストリッピング手術
 皮膚を切開し逆流している血管を取り除く方法で、複数の傷ができるため体の負担は大きく、術後に痛みや出血などのリスクがあるとされていますが病気である血管を取り除く治療であり、高い治療効果が期待できます。
③下肢静脈瘤血管内焼灼術
 病気の血管内にレーザーまたは高周波のカテーテルを入れて血管の内側を焼くことで治療します。熱によるやけどや痛みなどを防ぐためTLA(Tumescent Local Anesthesia)麻酔といわれる局所浸潤麻酔を数回注射する必要があります。
④下肢静脈瘤血管内塞栓術(グルー治療)
 医療用接着剤を病気の血管内にカテーテルで注入し、閉塞して逆流を防ぎます。熱は発生しないためTLA麻酔は不要であり低侵襲な治療です。喘息やアレルギーで治療中の患者さんは接着剤にアレルギー症状がでるリスクがあるため受けられないことがあります。

 いずれも保険適応であり医療機関によっては日帰り手術が可能です。
 下肢静脈瘤の状態により適切な治療を選択する必要がありますので専門の病院にかかられることをお勧めします。