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糖尿病の最新治療 今注目される2つの薬とは?

2024年2月2日

済生会松山病院 内科 梅岡二美 先生

  

 糖尿病治療の第一歩は、食事や運動などの生活習慣の改善です。

  • 食事療法のポイント

 栄養素の中で血糖値を最も上げるのは炭水化物です。炭水化物の多いものとしては主食であるご飯、パン、麺類、果物、イモ類、砂糖、お菓子、ジュースなどがあります。「炭水化物を食べ過ぎない」「野菜を先にたっぷり食べる」「ゆっくり時間をかけて食べる」と血糖が上がりにくいことがわかっています。

  • 運動療法のポイント

 まず自分に合った運動靴と歩数計を準備し、ウォーキングなどの有酸素運動を1日20分~60分、1日8000歩を目標に、できれば毎日歩きましょう。食後に歩くと血糖値を下げるのにより効果的です。

 食事・運動療法でも血糖値が十分下がらない時は薬による治療を行います。糖尿病の薬には、飲み薬と注射薬があります。様々な作用の種類の薬がありますが、血糖値が高くなる原因は患者さんごとに異なるため、それぞれに応じた薬を使います。

 今、最も注目されている画期的な飲み薬が「GLP-1受容体作動薬」と「SGLT2阻害薬」です。

 「GLP−1受容体作動薬」は、インクレチンというホルモンを用いた治療薬で、すい臓に作用してインスリン分泌を良くします。もともと自分で注射して使う薬でしたが、のみ薬が登場し多くの人が使うようになりました。

 「SGLT2阻害薬」は腎臓に作用する薬です。「血液中のブドウ糖を尿の中に排出させること」で血糖値を下げます。尿路感染や脱水などの副作用もありますが注意喚起することで、安心して使えるようになりました。

 「GLP-1受容体作動薬」と「SGLT2阻害薬」いずれの薬剤においても、低血糖の危険が少なく「体重を減らす」、「GLP-1受容体作動薬」には「食欲を抑える」作用があるため、体重を落としたい人にも向いています。

 さらに「GLP−1受容体作動薬・SGLT2阻害薬」には心臓や腎臓を保護する効果があることが報告され世界が驚かされました。そのため、糖尿病に心不全や慢性腎臓病を合併している人には積極的に選択されています。薬と食事運動療法の併用(体重管理、減塩)で、透析への進行を遅らせることが可能になってきました。

 今、新たなダイエット薬として広がっているのが、この「GLP-1受容体作動薬」です。しかし、病気でない人がダイエット目的で使うと危険性があり、すい炎など命にかかわる健康被害の報告も上げられており、副作用が出ても公的な救済制度の適応にはなりません。ダイエット目的で使用しないよう国や医師会が注意喚起をしています。

 糖尿病治療の目標は「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL(クオリティオブ ライフ:生活の質の向上)を目指すこと」です。

 糖尿病は日常の血糖コントロールがきちんとできていれば怖い病気ではありません。しかし、糖尿病を何年も放っていると、血管がボロボロになり、合併症を引き起こすことになります。糖尿病は残念ながら、一度発症すると完全に治るということがありません。糖尿病は「上手に一生つきあう病気」なのです。定期的に検診を受け早期発見をすること、そして治療を継続し、病気と上手に付き合いながら元気に長生きしましょう。