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乳がんと乳がん検診のはなし

2024年2月23日

松山市民病院 外科 梅岡達生 先生

①疫学

全国がん登録罹患データによると乳がんと診断される人は女性ではすべての癌のなかで1番で、男女あわせても4位です(2019年)。また、死亡数は人口動態統計がん死亡データによると大腸がん、肺がん、膵臓がんについで4位です(2021年)。

 ②診断

 乳がんの診断は病院や医院、クリニックの外科、乳腺外科で行われます。受診のおもなきっかけは、検診で指摘された、乳房のしこりに気が付いた、乳頭から液が出た、他の病気を経過観察していたら乳がんが疑われた等です。マンモグラフィ、乳房超音波検査といった画像の検査と、針生検や穿刺吸引細胞診といったがんの一部をとって顕微鏡でみる検査を組み合わせて行われます。がんの進行度をみるのにCT検査、MRI検査等が行われています。

③治療

 乳がんの治療は50年前はハルステッド手術と呼ばれる乳房、大小胸筋、脇のリンパ節をまとめてとる手術が主流でした。その後、手術方法はがんが浸潤してなければ胸筋はとらなくなり、また乳房部分切除も行われるようになってきました。脇のリンパ節も進行度によっては少ししかとらない方法(センチネルリンパ節生検)へと変わってきました。乳房切除後に乳房を再建する手術も行われています。がんの進行度とその性質(女性ホルモンに対する反応性、がん細胞の表面の増殖に関するマーカー、がんの顔つき)により手術、化学療法(いわゆる抗がん剤)、内分泌療法(おもに女性ホルモンの働きを抑える治療)、分子標的薬(がんを増やしている特定のタンパク質に対してのみ効果があるように設計された薬)、最近ではノーベル賞受賞の本庶佑先生で有名になった免疫チェックポイント阻害剤、そして放射線治療などを組み合わせて行われ、年々治療の効果は上がってきています。 

④乳がん検診について

 乳がん検診は乳がんによる死亡の減少を目的としています。科学的に死亡低減効果が証明されているのは40歳以上でのマンモグラフィによる検診のみです。マンモグラフィとは乳房専用のレントゲン写真です。乳がんの検出には非常に有用な検査です。ただし乳腺の多い脂肪の少ない乳房ではがんの検出率が落ちるため、注意が必要です。乳房超音波検査は乳がんの診断には有用な検査ですが単独での検診での有効性は証明されていません。マンモグラフィと併用することにより発見率が上がることが期待されています(特に40歳代)。

 多くの方が検診を受けることにより乳がんによる死亡を減らすことができますので積極的に受けることを推奨します。また、何か症状のある方は乳腺専門のクリニックや病院を受診することをお勧めします。