病気について知る病気の解説

注意を要するのどの痛み

2024年3月8日

こうの耳鼻咽喉科 河野 尚 先生

 のどの痛みはありふれた症状ですが、本稿ではそのうち、注意を要する疾患についてお話しします。 扁桃(へんとう)腺とは、奥歯の後方で左右に見える口蓋扁桃を指します。この部分の急性炎症が「急性扁桃炎」です。症状は飲み込む際の痛みで、多くは口の中を見ると口蓋扁桃の赤みや表面の膿(うみ)が観察されます。原因によらず、治療には安静や水分(重要です)・栄養補給に加え、何らかの薬物治療を要することが多いです。
 この口蓋扁桃の奥から裏に膿が溜(た)まることがあり、「扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)」といいます。多くは片側に起こり、口蓋扁桃の周囲が赤く腫れ、口蓋垂(のどちんこ)は反対側に片寄ります。症状は、飲み込みにくさの他に、痛みが片側で強い、口が開けにくい、などです。急性扁桃炎と似た治療に加え、膿を取り除く処置が必要な場合もあります。
 急激なのどの痛みで最も注意すべきものが「急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)」という疾患です。のど仏の裏側にある喉頭蓋という部分やその周囲が腫れ、痛みは強烈で唾液すら飲めない場合もあります。前述の扁桃疾患と関連する場合もありますが、そうでない場合は口を開けて見える範囲には異常がありません。喉頭蓋は気管の入り口上方にあるため、炎症・腫れが高度になると、呼吸困難や窒息に至る場合もあります。数時間単位で急速に悪化する強い痛みは特に注意が必要です。
 また、新型コロナウイルスに関連した急性扁桃炎や急性喉頭蓋炎もあります。前述の症状に発熱を伴う場合などは、こちらも注意しましょう。