病気について知る病気の解説

緑内障禁忌の薬を飲む前に眼科受診を

2024年3月22日

松山市民病院 眼科 林 康人 先生

 薬局で薬を受け取るときに「緑内障ではありませんか」と聞かれたことはないでしょうか。これは、一部の薬剤が緑内障患者が使用してはいけない薬、つまり「緑内障禁忌薬剤」になっているからです。緑内障禁忌薬剤はさまざまな飲み薬に含まれていますが、副交感神経の働きを弱める薬にあたるため、注意が必要です。 目の中の水(房水)は、目の絞りにあたる虹彩(茶目)の裏側にある毛様体で作られ、虹彩と水晶体(ピントを調節するレンズ)の間をすり抜けて、虹彩とその前にある角膜との隙間(隅角)から、目の外へ出ていきます。子どもの頃からメガネなしで遠くがよく見えていた人のなかに、この隅角が狭い人がいます。緑内障禁忌薬剤を服用することで副交感神経の働きが弱くなり、虹彩が分厚くなると、房水の排出ができなくなり、目の圧が高くなります。この高眼圧が目の奥の神経を圧迫して、一晩で失明してしまうことがあります。これが「急性緑内障発作」です。小柄な年配の女性が夜中に激しい頭痛により救急で受診した場合、この病気を疑う必要があります。
 発作時は、レーザーで虹彩の付け根にバイパスを作って眼圧を下げるのですが、レーザー治療後に角膜が混濁する人がいます。そのため、現在は発作を予防するための白内障手術をして、虹彩を後ろから押している水晶体を人工水晶体に代え、隅角を広げることが行われています。
 発作が起きる可能性がある隅角が狭い人は、眼科に通院している緑内障患者さんの約1割です。眼科通院中の人は予防の手術やレーザー治療を受けており問題ないのですが、眼科受診したことのない人が問題になります。無症状の人も、一度眼科で診てもらうことをおすすめします。